雨の日の50分間

8/23
前へ
/23ページ
次へ
「なんか、一歩前進かも。それにあの人、またって言ったよね?」  また会えたら話してくれるのかな?またって、また次があるっていうことだもんね?どうしよう……凄く嬉しい。  思わずニヤける顔、琴葉はワクワクしていた。何かが始まるような、そんな予感。それが何かは、まだ分かってはいなかった。  それから二日後、いつものようにコインランドリーに行くと、男性がベンチに座ってまた本を読んでいた。一瞬声をかけるのを躊躇うも、琴葉は勇気を出して話しかける。 「こんばんは」  その声に男性は顔を上げると、こんばんはと言った。 「回してきますね」  別に自分を待っているわけでもない。しかし気持ちがなぜか早く話したいと、急かしてくる。乾燥機を回すと、定位置になりつつあるベンチに座る。それを見て男性は、本を閉じた。 「よく会いますね」 「本当に。今日は何を読んでいるんですか?」  そう言うと男性は、本の表紙を見せる。知らないタイトルだった。 「読み終わったら、感想教えて下さい。いつも本を読んでますけど、本好きなんですか?」 「はい」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加