雨の日の50分間

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雨の日の50分間

 ゴウン、ゴウンと乾燥機の中で、濡れた洗濯物が塊になって回転している。いくつもある乾燥機、ふわっと鼻に届く熱の匂い。琴葉(ことは)はコインランドリーの中にある小さなベンチに座りながら、置かれた旅行雑誌をパラパラとめくる。 「雨止まないなぁ」  ちらっと外へ視線を向ければ、軒先から雨粒が滴り落ちていくのが見える。梅雨に入り、毎日のように雨が降るようになった。一人暮らしをしている琴葉は、二日に一度コインランドリーに来ている。バスタオルが二枚しかないため、二日に一度は乾かしに来ないと困るのだ。  仕事終わり軽く夕食を食べてから、ここへ来る。この時間は人も少なく乾燥機が終わるまでの五十分、ゆっくりするには最適だった。旅行雑誌に載っている様々な観光地や食べ物、お土産を眺めながら、どこに行こうかと考えるのが好きだ。  夏休みにはどこへ行こうか?友達を誘ってもいいけど、たまには一人旅をしてみるのもいいかもしれない。ずっと一人旅に憧れながらも、勇気がなくて行動に移せずにいた。独り寂しい女だと思われるのが怖かった。  今時一人旅なんて珍しくもない。それでも女子校育ち、女子だけの短期大学を出て、個人病院の事務として働いている琴葉は、今まで男性と付き合ったことがない。
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