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それは、携帯電話にあるアドレスから一切の男の名前を消せという内容だった。
女友達を通じた共通の友人ならまだしも、会社の同僚男性や、取引相手や顧客のアドレスまで消すことはできない。もはや仕事が成り立たなくなってしまう。
突然の言葉に動揺した咲紀だったが、何とか説得しようとした。
すると、今度は一方的に罵ってきた。
そして、最後に言い放った一言に衝撃を受けた。
――なら、お前が絶対に浮気しない方法を取れ。
というものだった。
その瞬間、咲紀の中で何かが崩れ落ちた。
そして、今まで我慢していた感情が崩壊してしまう。
彼女は泣いてしまった。
どうしてこんな目に遭わないといけないんだろう。私は何もしていない。何故、私ばかり苦しまなければいけないのだ。そう思うと、涙が止まらなかった。苦悩の末、咲紀はある決意をする。
それは、顔に刃物を入れること。
顔に傷を入れれば、誰も言い寄ってこない。
それで全てが解決するはずだ。
咲紀は自分のアパートにて、早速行動を開始する。
市販の鎮痛薬を服用し、薬が効いてくれる30分待つ。
アルコール消毒液、カミソリ、ガーゼ、タオルを用意し、洗面台にある鏡の前に立った。咲紀は震えていた。
これから行う行為が怖かったのだ。
だが、彼女は覚悟を決める。
まずは左目の下から頬にかけての肌に消毒をし、洗ったカミソリも消毒液で濡らす。刃が光を増す。
そして、カミソリの刃を左目の下に当てる。
怖い。
震えが生じる。
手が、動かない。
心臓の鼓動が激しくなる。
落ち着け。
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