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二人の仲は比べようもないくらいに良くなり、咲紀は幸せな日々を送っていた。
ただ、気がつけば恋人同士のスキンシップは少なくなっていた。
それから後のことだった。
咲紀は、久しぶりにデートに誘われた。ここ二週間、克幸が忙しく会えなかっただけに、咲紀は嬉しかった。
場所は遊園地。
約束の時間になり待ち合わせ場所に行くと、すでに克幸の姿があった。
咲紀は今日のデートに淡いピンクのワンピースに紺色カーディガンの組み合わせで、上品な大人の魅力を出したコーディネイトにし、ヘアスタイルも服装に合わせて美容院で自然ながらも上品見えするアップスタイルに。
オープンハートネックレスに、ピアスには雫がモチーフの清楚な印象にした。
眼帯こそ咲紀の美しさを不自然にさせていたが、彼女自身は楽しそうで幸せであり、笑顔が輝いていた。
しかし、咲紀は違和感を覚えた。
それは、克幸の表情だった。
咲紀を見るなり、急に不機嫌そうな顔になる。まるで別人のように。
「遅いじゃないか」
怒り口調で克幸が言った。
「ごめんなさい。ちょっと準備に手間取っちゃって。遅くなるつもりはなかったの」
咲紀は、頭を下げると、咲紀は頬に手を当てられた。
――えっ?
突然の出来事に驚く。
顔を上げると、そこには克幸の顔があった。彼の唇が自分のそれに重なっている。咲紀は驚きつつも抵抗しなかった。久しぶりの口づけで嬉しかったから。
だが、その感触を楽しむ間もなく、すぐに突き離された。
「咲紀。俺たち別れよう」
唐突に告げられる。
その一言は、咲紀にとって青天の霹靂であった。
咲紀は、どうして? と理由を聞いた。
すると、彼は不満そうに視線を外す。
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