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こんなところにあった、と木野さんはレジの台から顔を出してきて、ここは洞窟かと思った。
「見て、見て、これね、中身もいいんだけど」
表紙を開けると、一枚目がブルーのうす紙になっていて、鳥の模様がほどこされていた。
「きれいでしょう。しおりもきらきらしたブルーでね、ここの背表紙のところ、「はなぎれ」っていうんだけど、ここもあわいブルーなんだ」
「へえ……」
「ことりちゃんに、あげる」
そのような本の工夫に何の感情もわかなかったけれど、木野さんがにこにこしているのが何だかうれしくて。ありがたくいただくことにした。木野さんには多分、そういうところがある。
「ことりちゃんに、いいことがありますように」
木野さんは本を持ったまま、少しだけ目をつむって祈ってくれた。
「また来てね」
帰る時、木野さんは名残惜しそうだった。
「そして、また片付けに来てね」
「あ、はは……」
木野さんと私は、いつまでも手を振り合って別れた。
駅に着くまで、川沿いを歩く。青空がきれいだ。木野さんからもらった本を出して、表紙を開いた。
パラッ
「あっ」
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