古書のコショコショ堂

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 あわてて私はその場を退散した。少し行くと、公衆トイレが見つかった。その隅に古い小さな蛇口がある。私は蛇口を勢いよくひねって、制服を洗い流そうとした。  すると、下に落ちてくるかと思った水は、噴水のようにまっすぐ上に飛び出してきた。 「うおっ、ぷっ」  誰かのいたずらか、蛇口が上向きになっていたのである。  私はまともにその水をかぶった。顔面はびちょびちょ。制服のシャツも派手に濡れてしまった。 「な、なんで……」  落ち着こう。落ち着け。とにかく鳥のフンを落としたい。ずぶ濡れのまま、私は蛇口の向きをもとに戻し、がむしゃらにおなかを濡らしてこすった。幸い生乾きだった鳥のフンは、すぐに落ちた。だけどがむしゃらにやりすぎて、私の上半身はびちゃびちゃになってしまった。半袖だし、何がそんなに暑いのかと言われてしまいそうだ。  泣きたくなってきた。やはり、神様はおられる。そして学校の先生じゃなく、神様が私を罰したのだろう。冬服を忘れた罪に対して……。  みじめだ。みじめすぎる。  もう立てない。堂々と歩くなんて無理。鳥のフンだけではない、私自身が汚点である。そんな気がした。
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