3人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
私には幼い頃に体験したトラウマがある。それはお化け屋敷という、人を怖がらせる場所でだった。
それ以来作り物のお化けや仕掛けによる怖がらせなど、取るに足らない。
あの日以来、私はお化け屋敷には入れない。
小学校低学年生くらいの幼い時だった。私は母と二人デパートに来ていた。そこに店員が作った期間限定のとても小さなお化け屋敷があった。
小さい子向けの本当に簡単なものだ。出てくる子供たちも全然怖がっておらず、すごかったねとはしゃいでいたので私は母に入りたいと言った。
入ってみると薄暗い中に怖い絵が飾ってあったり何かが吊るしてあったり。確かに怖くはない。ワクワクしながら進んでいた時だ、それが起きてしまった。
頭に凄まじい衝撃が走る。
「みぎゃ!?」
「あ、ごめんなさい!!」
私の頭に、天井から落下させ驚かせる予定だった人形の頭が直撃したのだった。スタッフが完全にタイミングを間違えたらしい。
裏方のスタッフがバタバタ出てきて平謝りだった。
その日以来私は怖くてお化け屋敷に入ることができない。お化け屋敷でミスられるのが一番怖い。
あの人形漏電して燃え始めるんじゃないかとか。
床が突然抜けて地下に落下するんじゃないかとか。
システムエラーで爆発が起きるんじゃないかとか。
天井からスタッフが落ちて来るかもしれないとか。
あらゆる事態を想定しなければならない。一番恐ろしいのはお化けじゃない。ヒューマンエラーなのだ。
「だから私は入らない」
友人に真顔でそう言うと、スタッフが笑顔で声をかけて来る。
「ようこそ恐怖の館へ。次のお客さま、何名様ですか?」
友人も笑顔で答えた。
「二人でお願いします」
「行かないっつってんだろおおおお!」
END
最初のコメントを投稿しよう!