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ポツン…と雨が一雫落ちてきて、僕の頬を濡らした。
ポツン、ポツン、ポツン…
段々と増えてゆき、やがてザアザアと雨が降り出した。
慌てて近くのコンビニでビニール傘を買い、それをさして歩く。
家まで着く間に、どんどん雨は強くなっていった。
夜中の間も、雨は止むことなく降り続けた。
その次の日も、またその次の日も、ずっと雨が降り続いた。
それから、1ヶ月過ぎても雨は止まなかった。
テレビには、川が氾濫し、田んぼや畑の様子を見に行った老人が足を取られて亡くなったニュースが流れる。
そのうち、僕の家の周りも段々と道路に水が溢れ、外出することもままならなくなっていった。
食べ物を得る為に、長靴を履いてザブザブと道を進む。
コンビニやスーパーには人が溢れ、食べ物を取り合っている。
レジの人もいないので、みんなお金も払わずに奪いあうようにして持ち帰っている。
僕も必死で食べ物を持てるだけ持ったが、ふと隣のホームセンターにいけば、ビニールのボートがあるかもしれない、と思った。
食べ物を取り合う人達から離れ、ホームセンターで、都合良くぷかぷか浮かんでいたビニールボートと、膨らますための器具を手にいれた。
家に持ち帰り、水浸しになりながらも
それを膨らます。
膨らんだビニールボートにとりあえず生きる為の水や食べ物をいれた。
___
ある日、目が覚めると何もない大海原に僕のボートだけがポツンと浮かんでいた。
みんなみんな雨に流されてしまったのだ。
僕だけが僕ひとりだけが生き残ってしまった。
そうまでして生きたかったのか?
僕は、どうすることも出来ずに、泣きながら、ただユラユラと水の上を漂っていた。
__
「はっ……」
泣きながら目が覚めた。
「良かったあ…夢だったんだ…」
僕は、いつもの部屋で目を覚ます。
あまりにリアルな夢だったので、慌てて窓の外を見ると、空は雲ひとつない快晴で、街は静かに朝を迎えようとしている。
1人だけ生き残ったところで、自分には何も出来ないんだな…
この世界が、沢山の人達で回っていることを実感した。
分かってはいたけれど、どうしても自分だけはと欲深くなってしまう。
これからは、周りの人達とちゃんと向き合って生きよう。
その日から僕は、引きこもりを止めることにした。
―fin―
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