落ちた 落ちた

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「おーちた おちた なーにが おちた」 リタとアルが、あそんでる。 からっと晴れた 昼下がり。 内緒の 内緒の 屋根の上 二人で こっそり のぼってさ。 「おーちた おちた なーにが おちた」 「こねこが おちた。」 「こねこが おちたら どうするの?」 アルが聞いた。 「こねこは おちるのが とくいなんだ。だから、なにもしない。」 「もしも けがをしていたら?」 「もしもけがをしていたら やさしくうけとめてあげるんだよ。」 リタが言った。 「うけとめたあとは どうするの?」 「いらなくなった ぬのきれで まいてあげるんだよ。」 「どうやって?」 「かあさんが やってくれたみたいに。」 「おぼえているの?」 アルが また聞いた。 「おぼえてるよ。」 リタが腕をさする。 「もしもかあさんが いたのなら そうしてくれる はずだから。」 「リタのかあさんは どこにいるの?」 「わからない。きっとどこかに つれていかれたんだ。」 「リタを うんでしまったから?」 「わからない。でも たぶん あえないんだ。」 「もし かあさんがいたら」 アルは言いかけて やめた。 これ以上は言ってはいけないと思ったから。 「こねこは ころされなかったかもしれない。」 リタが声を震わせた。 冷たくなった 仔猫を抱いて。 もう帰らないと 見つかってしまう。 それでも リタとアルは 遠く 遠く離れた木の下に 仔猫を埋めた。
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