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「お待たせしました、『みすず』です」
近くで見ると、目鼻立ちがはっきりしていて、美しい顔立ちは昔のままだった。唇もこの辺りの街角で見かけるような小娘の真っ赤な色ではない、抑えた発色の口紅だった。それが実年齢である歳よりも、彼女を大人びて見せていた。口許の小さな黒子も昔のままだ。
「あの…チェンジ、されますか」
何も言わないで彼女の顔を眺めていたのが不安になったのか、彼女は急におどおどとした態度になった。
「指名しておいてチェンジはしないよ」
招じ入れると、『みすず』は少し安堵した様子になった。傍らを通る時に、彼女を被うベールのように淡く甘い香水の香りがした。
「先に電話、しちゃいますね」
『みすず』はそう言ってスマートフォンを取り出し、小声で店と連絡を取り始めた。小さなソファに腰かけ、財布から万札を出しながら電話が終わるのを待った。
背も高く、綺麗なワンピースのデザインを更に引き立てる身体の線の起伏を持っている。電話が終わり、『みすず』がこちらを見て行った。
「お風呂、入ります?」
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