History of TACCH.

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History of TACCH.

 2030年春。私天宮優里は、漸く人生を振り返られる。  芸能界にいる以上エンタテイメントは何かと訥に考える。米国はそのまま広大で、3億5千万人いる。夢と安定したギャランティを確保するならこの規模は必要だ。もっとも米国というブランドが長らくなら、イコール全世界にも伸びているので、世界の芸術は回り続ける。  故に、閉じ気味の日本国の1億1千万人で、エンタテイメントをするのならば、凌ぎを削り合って小さくはないピラミッドに立たないといけない。競争相手がどうな事になろうと。そう己だけが幸せであるという事は、あなたがどんな努力をしてきたかの賜物だ。悔いることは無い。冷たい事を言っているが、私は歯軋りをして憤りの震えを我慢している。  思い返すと、皆で一緒に乗り越えられたのに、何故それを捨ててしまったか。グループの相性が悪い。いつ迄もアイドルはこなしていられない。30代前に女の道筋は見出しておきたい。それはごもっともだが、芸の道を目指しておいて、それをあっさり投げ放つ事は、自らの研鑽を投げ放つ事に等しい。はっきり言えば、気づかない自己否定だ。人生、それで良いの。良い訳はない、私と青春を過ごした仲間は、簡単に言えばしっぺ返しを食らって、道筋を途絶えた。はっきり言えば哀れだ。芸を極めた者だけに、栄光は近づく、それに気づけば尚良し、気づかなければ、また身持ちを崩す。栄光と孤独は背中合わせというが、決して混同してしてはいけない。  不意に、私はワンレングスの髪を掻き上げる。撮り直しはいつでもしますけど、プロローグは重厚な方が良いですよねと、同じ年代で同じ黒髪ワンレングスの女性プロデューサー芦間知音に問う。そこは放送出来る範囲でのフラッシュバック次第ですよね、と釘を刺される。それもうそうだ。  ここ、ブランコード高輪ホテルはとても感慨深いので、ビジネススイートを、ロングインタビューの撮影場所に選んだ。  そう、私が在籍したアイドルグループTACCHに関しては、そのまま使って貰えますかと、配信会社LEDSAURUSの芦間知音女性プロデューサーに切実に訴えた。  今や飛ぶ鳥を落とす勢いの天宮優里関連のドキュメント枠でも全5話編成がやっと。ただ事前打ち合わせの年表の表と裏を取り交わす内に、あーの、こうーの、をどうしても入れたくなり、今日の収録迄答えが出なかった。私は取り敢えず撮って貰えますか。芦間知音プロデューサーは、8話構成になるわねと、長く黒く艶やかなワンレングスを何度もかきあげた。そのうなじ、実に良い。ワンレングスは心が温まる。  私は真隣に座る芦間さんの左手の甲を滑らかに撫でる。そして芦間さんの中指薬指をお口に含むと、そうね。そして中指人差し指をお口に含むと、はあ。結局また、中指のみをお口で包みこみ、思い切り吸い込み密着させると、ああん。これだ、三十路を過ぎても自慰が一本指では感度も育たたず独身なんて、可哀想としかな慰められない。  私は下唇を差し出した。芦間さんは、もうと意を決したか、私の唇を懸命に舐め上げ、喉笛に入ろうかの舌を入れ陶酔する。いいんじゃない。ここ数日で前のめりになってる。私のこの手のリップサービスは、今に始まった事ではない。安易に多用しないが、真心を伝えたいは大人の嗜みだ。  そして互いに脱がし合い畳み、女性二人全裸で絡み合う。TACCHのドキュメンタリードラフトで積み上げたSEX話のもやは、二人一緒に行くと晴れた。結果として、画的にはナチュラルな色気の佇まいになったので、これはこれで成功だ。そして、互いに晒し尽くした事で、意思の疎通もスムーズになり、阿吽でカメラ割りも決まる。  私の所属していた、TACCH事東京コンフェデンシャルチルドレン&ヒューマニズム(Tokyo Any Confidential Children & Humanism)は、結果は残すも大成功したアイドルグループではない。未だにオーライレブンスレコード内のBOSATHUレーベル所属アーティストとして、インターネット上にある公式プレスシートの印刷物を丁寧になぞって行く。  最終メンバーは、私ゆうり・わたり・さくや・りんか・たんご。都度の刷新で脱退したのは、ゆかり・あやみ・みっつ・なつみ。超初期早々にで脱退したのは、かるら・ゆづる・すずか。  苦しい時もあったけど、皆、どうしてもステージでは輝いていた。舞台袖は葛藤しかなかったが、それを見せないのは一端のプロだなと、クロニクル資料を掻い摘んで再生しては、感慨に浸る。その日々が、今ではただ愛おしい。  差し込む修正進行表はこんな感じと、芦間知音プロデューサーに説明台本を渡されチェックする。清書したけど、年表が気になったら添削してねと、赤ペンも渡される。概略に徹したいので、言いたい欲望は極力抑える方向にしたい。  #2015  2015年4月7日:TACCH(Tokyo Any Confidential Children & Humanism)結成お披露目日。  ミリオンシンガソングライター小栗泉が立ち上げた、オーライレブンスレコードのBOSATHUレーベルのオーディションに、集った5113名から12人選抜のお披露目会見。合わせて、同じ事務所のオーライレブンスレコードマネジメント先輩方の、ファイトコールビデオも流れる。TACCHのモットーは日本にブロードウェイを。専用舞台として、エージェントの電源逓信商工の本社カレッタ汐留B2に、Actor Theater SBR2を完成させる。サプライズこけら落としも大きな話題になる。  この巨大制作費のインパクトも有り、日々の取材は多かった。ただ1月に最終選考を受けて、たった3ヶ月でデビュー会見は早かったと思う。もっと時間を掛けて、メンバー入れ替えても良かったかは、このフレッシュさもアイドルには必要とを受け入れる。ただ泉さん曰く、君達はアーティストだから、結果をすぐ出してと、日々釘を打たれまくる。  2015年7月ー9月:TACCHの「Tokyo Meeting.1」通期公演。  ソング&ダンス&アクト。TACCHと下部研究生グループThroughout合同公演は、各媒体で積極的にトレーラーが流れ、右肩上がりに話題となる。そして、新人としては画期的に、発売3日で全公演チケットがsold outを果たす。  1週間に2休演日はあるも、3ヶ月フルの公演は、無事怪我も無くゴールする。最終日はサプライズで、乱発した配信トレーラーの中でもPVが最も高いメンバー、私ゆうりとわたりが、ユニットとしてOpheliaSを結成する。  この「Tokyo Meeting.1」で、大凡のメンバーは通期公演しんどいと疲れ痩せ細る。私としては、一公演はバレエの1/2しかない躍動なのでそうかなと。まあ、長期公演の精神と身体のバランス調整は良い経験になり、芸能人生の先々で勉強させられた。  2015年10月10日:満を持してのTACCHの1stシングル「New World/You Spin Me Round」を発売。合わせてBOSATHUレーベルのサイトに本メンバー9人の紹介を行う。  音楽プロデューサーは、現役シンガソングライターの小栗泉が務める。和泉さんは、黄昏時期でもない好調安定期なのに、何故の声が大きかった。  販売成績は、総合メディアチャートでは新人ながら3位に入り、より大きな期待を持たれる。このデビューシングルから、何故かB面の往年のユーロミュージックカバーの方が好評になる傾向だ。  最初は、オーライレブンスレコードが幹事であるものの、誰がプロデュースするかが皆の不安要素だった。日々の練習で、著名人が挨拶に来るも、一番素っ気ない感想が小栗泉さんだったので、皆が負けるかと躍起にはなった。それが、活動終始続くとは。まあ心が女子だったら挫ける事ある。でも、その泉さんの厳しい指導がなかったら、1年で空中爆発していたと思う。  2015年11月:BOSATHUレーベルのサイトに、あやみの卒業発表の案内を掲示。  何故大型プロジェクトに、思春期ど真ん中の娘を入れたかが、運営の皆のぼやきだった。あやみは、TACCH一の美女で、躍動した一端を担っていたでしょう。私は世話役だけあって言い返しに言った。それから、内々の事はゆうりと振られる。それはリーダーの役割でしょうと思いながら、渋々TACCHの修正はしていった。  #2016  2016年4月7日:2ndシングル「乙女絢爛/Never Gonna Give You Up」を発売。  ただ旧来のトレーラー映像作成置きっぱなしと、手売り販売とでなおなざりにした為、総合メディアチャートは17位に落ち着く。一般受けに届かなかったが、ミドルテンポのシングル曲の完成度は高く、アーティスト伸び代を引き出した楽曲は、何かと同輩家業からリスペクトされる。  ただ、結成1年にして、早くの大停滞。プロモーションが一般的過ぎて、同業他社に埋もれて見つけられ難い。それはTACCHの輝きが足りない、時間はあるので様子を見よう。それが会議の一次結論。今となれば宣伝費の効率運営は止む得ない。  2016年7月ー9月:「Tokyo Meeting2」通期公演。  デビュープロジェクトがブロードウェイを目指した事から、舞台公演が主戦場を継続。果たして全公演もsold outと、フロック無しの実力主義のアーティストグループの評判を勝ち取る。  ただ、プレスではsold outも、立ち見席は無くし、4割の席が招待席の為、前方の穴あきが目立つようになる。舞台は人気のバロメーターそのものだ  2016年10月10日:3rdシングル「私の愛した彼氏/Dancing in the Streets」 を発売。  胸を弾ませる楽曲に回帰し、スタイルもアイドル受けの方針にも舵を切った事で、テレビ出演も多くなる。そしてシングルには下部研究生グループThroughoutの楽曲も網羅され、総合ファン組織の名称ティーチャーズの評判も上々。総合メディアチャートでは15位も、明るい話題が記事になり、話題性は善処はした。  2016年11月:メンバーの個人活動解禁。  メンバーの個人としての引き合いも来ていたので解禁措置。舞台だけではなくバラエティー迄広範囲に広がり、活躍の場を広げる。  ただ、ここに関してはオーラレコードマネジメント社長松風獣道が、高校卒業してるなら営業取ってこいは深いお察しで、規律が瓦解して行く。私としては、女性だったら喜びを分ち会うのも当然とは思う。ただ常識的な節度と愛情も込めてだ。  #2017  2017年5月:BOSATHUレーベルのサイトにみっつの卒業発表の案内を掲示。  アイドルだから卒業はあるだろうも。この時点でデビュー時メンバーが12人から、7人になっており、やはり増員すべき意見がレーベル局員内で増す。ただ制作側で、この位の方がコーラスの透明感があると、現状維持の方向。  みっつの不純交際への裁定は一番厳しい判断。またもTACCHの増員が議論されるも。実質下部研究生グループThroughoutは、目ぼしいメンバーの多くは自主卒業し、新事務所に入所したので、機を激しく逸する。レコード会社直属事務所だから、待っているだろうは大きな判断ミス。そうとは言え、総合合格点に達しないメンバーを、安易に昇格させて練度を待つは、アーティスト、いやアイドルサイドでもそこ迄待ってくれる時代ではない。ファンの目が肥えて、常に完パケの組織を待っている。  2017年7月ー9月:「Tokyo Meeting.3」 表向き好評の新規定期公演。  公演最終日。オーライレブンスレコード本社が協議し、首都圏限定から全国区に駆け上がるべく、下部研究生グループThroughoutの発展的解散を事前にプレスリリースする。 「Tokyo Meeting.3」から、水増しプロモーションは無くなり実数になる。その為、平日の入りはかなり悪く、演者の士気も低くなる。いよいよ痺れを切らした泉さんが、Throughoutの発展的解散の大ナタをふるう。解散はするも、事務所のオーラレコードマネジメントに席は用意するので、あとは自ら研鑽せよ。  Throughout解散はそれで良いと思う。TACCHのセールスは低迷するので、昇格の既定路線は実質有り得ない。TACCHの先が見えないのに夢を見せてもしょうがない。  そもそも、学校帰りのノンリハーサルの未成熟で挑む程、舞台は到底甘くない。この見た目温和な私が説教しても改善しないのだから、泉さんの判断は絶対正しい筈。  2017年10月10日:4thシングル「聖母の子守唄/I Still Haven't Found What I'm Looking For」を発売。  総合メディアチャートでは28位の苦杯。歌いこめるスローテンポ楽曲として、A面B面共にカラオケランキングの初動に入るも、要所不協和音のメロディーが難解過ぎて沈下、時代を待つ事になる。 「聖母の子守唄」は映画音楽的残響を求めた意欲作も、そもそも日本国の安価なサウンドシステムでは、超大作の音量も低いものだ。ただ小栗泉の評価は上れど、不協和音多すぎて、TACCHは歌が上手いのどうなのが一般酷評。そう、理論スケールが難解過ぎて、何故か私のボリュームフェーダーが下がり過ぎる。そして編集段階でごっそりパートが無くなる。なんだかなだ。  #2018  2018年1月1日:1stアルバム「Forever More」が満を持して発売。  販売は、2枚組のType A・B・Cのパッケージ。ディスク1に15曲本編。ディスク2に「Tokyo Meeting」の1・2・3それぞれの公演楽曲の、蔵出しスタジオレコーディング音源の意匠を凝らす。ただ、アイドルとしては先進過ぎて、総合メディアチャートではトータル扱いで54位。宣伝が足りなかったのは、単純にA&Rの努力不足と大きく反省する。幻の公演曲がパッケージ化も、そこ迄「Tokyo Meeting」に見たかった層がいなかったの現われだ。  宣伝不足はどうであるべきだったのか。個人活動でそれぞれファン層を広げるも、TACCHへの訴求力が、イマイチ及ばなかった。それは買うに値するのか。TACCHはアーティストなのかアイドルなのか、ここがつい振り切れておらず、媒体への出演・インタビューもインパクトを残せていない。そうなると、Type A・B・Cのパッケージ全て買おうは難しいと、どうしても思う。  2018年1月ー3月:アルバム発売に伴う都市圏ツアー。「Forever More Tour」の最終日で、活動休止中のゆかりの卒業発表。ツアー後のゆかりは個人活動に専念する。  実際の所、大喧嘩でゆかりが卒業。ほぼメインボーカルのエースが抜けた事で、TACCHの士気が下がる。この口に出来ない解散ムードで、とうとうメンバーからつい解散の一言が出てしまう。私もその一人だ。  そうここで、私もゆかりと一緒に新事務所に移籍だったが、運営が首を振らなかった。いざ私も、案外仲間意識が強く、見限る事は出来はしなかった。真実か嘘か。裏付けは泉さんに聞いて下さい。  2018年10月10日:5thシングル「peaceful days/Livin' On A Prayer」を発売。  夏期に不採算の「Tokyo Meeting」もなく。そして新体制への準備期間が長過ぎて、ファンクラブの会員数が1/3迄に急減する異常事態。それでも総合メディアチャートでは31位と、B面の楽曲効果も有りかなりの健闘を見せる。  個人活動はすれど、TACCHは実質半年の活動休止。斜陽グループなので、解散かの少なくないSNSコメントが散逸し、求心力も無くなった結果が、TACCHは売れなかったグループと定着してしまう。  それでもシングルの売り上げが健闘したのは、「peaceful days」もロンドンフューチャーステップが新鮮と、ダンス大好き界隈からも購入されている。ダンサーから挨拶すると、ウォーミングアップの為にCD買ったよは素直に嬉しかった。  #2019  2019年1月1日:2ndアルバム「Mr.Trainman」を発売。  アルバム至上主義を投げ捨てて、全曲がシングルカット出来るキャッチーさをで、レーベル会議が即決、7人新体制でのコンスタントヒット路線に舵を切る。いざアルバムの評価は、エバーグリーンディスコ主体で支持層は中高年に伸びて、総合メディアチャート8位は大きな反転攻勢に至る。確かに楽曲群はフラム加減が、踊っていて楽しいし、決めポーズのキャッチーさも真似したくなる。  これ迄の楽曲は、どうしてもボーカルの幼さを相殺する為に何かしらの生楽器セクションを設けるも。それなりに成長したし、次の段階に入ろうかの泉さんのokサインも貰って、ディスコミュージックを意識する音楽嗜好に方針転換。アルバム曲5曲がダンスMVととして公開され、視聴者の踊りました動画を見ては、久しぶりのご満悦。実際受けてるのかなも。スタッフの勧めで赤坂の懐メロディスコに行くと、「Mr.Trainman」の楽曲がプレイリストに入っており、MV通りの80年代ステップで踊られてフィーバーしている。やっと階段を上がれるかの期待はどうしても上がる。  2019年1月ー3月:好評アルバム「Mr.Trainman」発売に伴う全国ディスコハウスツアー「Mr.Trainman Tour」を敢行。  各地ディスコの箱なので、ライブハウスツアー程動員数は見込め無いものの、中高年層は勿論、80sディスコに興味のある若者も来場で踊れや騒げやでフィーバー。ややの全国区の手掛かりを掴む。  まあ無礼講はあれ過ぎた。小さな成功に気を良くした非処女組が、お酒の勢いで、土地土地で密着ダンスの果てに、男性を女子トイレに次々連れ込み自由三昧。当時噂にもならなかったのは、それ程抜群の女性ではなかった証拠かな。  2019年4月4日:突如キャプテンなつみが新規個人活動宣言し、夏場の「Tokyo Meeting.4」を前に卒業案内と上契約満了となる。  これに伴い収録済みのシングルは見送り、6thシングル「仮題拾弐/I’ll Be There」が関係各位諸事情で発売中止に。既にプレスに配布されたCDはブートレグになり、インターネットに上がった音源は赤坂テレビ関係者によるもので厳重抗議する。  なつみは、ただしょうがない人物。探せば良いところはあるだろうが、その前に攻撃的過ぎて取り付く島がない。これはリーダーの重責もあっただろうけど、だからと言って、プライベートではっちゃけ過ぎては、TACCHも共同責任取らされ、グループ全員迄もが路頭に迷うのは本望ではない。リーダーが明らかな解雇通告では面子も何もないが、これはどうしても言わざるを得ない。なつみは本当にしょうがない危険な性を持っている。  2019年7月:内定中の2020東京オリンピックアクト練習で、公式オリジナルメンバー9人が再結集。  ただ、完全封鎖のカレッタ汐留B2の屋上の練習中に私とゆうりとわたりを残して、皆ダウンし病院に搬送されて、インターネットのトップニュースになる。真夏日にそんなにメンバーが集まって、あれか。推定東京オリンピックはサプライズだらけかと、他のアーティストにも、招集されてるされてないの風評被害が広がる。  今となっては、内定時点であっても、ひ弱過ぎるぞメンバーだけど。3日連続37度の猛暑では、流石に基本女子なら弱るかだ。そうとは言え、いざの熱帯夜の国立競技場の開会式の大舞台で救急車が呼び込まれては、世界中に恥を晒していたので、神様はちゃんと見てるって事かな。  2019年7月ー9月:「Tokyo Meeting.4」の新規公演。  グループを巡る人気はやや好転するも、毎度曰くの合った通期公演、今回「Tokyo Meeting.4」は賛否両論となる。1-4を通した伏線も多く、新規入場者が、この分かるでしょうの雰囲気は何と思い倦ねる。また新体制5人でメンバー増員の様子も無く、旧Throughoutメンバーも事務所在籍が1/3になった事で多様性を逸する。舞台の密集度が全くないのは止む得ない。そこに個人の演技力が物足りない。そして、古参ファンの推定半分が、SNS上でTACCHは終わったがタイムラインに羅列される。さて、またも終わったかを言われるのかだ。第一の矛先として、運営側に猛省を促される。  運営の急務は、とことん増員問題が付きまとう。旧Throughoutメンバーに昇格メンバー候補がいないのなら、約5000人がオーディションを受けたのだから、追跡調査でピックアップすれば良いでしょう。  ただ既にオーディションから足掛け5年で、目ぼしい学生候補者にそれとなく声を掛けるも、進路が定まってます。皆が一斉に天を仰ぐ。夢より現実に目覚めるものか。女子のキラメキとは、淡く儚いものだ。ここは、事務所が大きくツケを払う事になった。ドキュメントにもなった熾烈な競争は、映像映えするも、当事者にとっては理不尽の連なりだ。  2019年10月10日:不評払拭の為に、やけっぱちの三ヶ月連続シングルリリースを大敢行。7thシングル「If you've ever seen/Baby Love」を発売。  今回ご機嫌斜めの小栗泉さんは、作詞とプロデュースに徹する。三ヶ月連続シングルリリースの作曲と編曲と演奏は、先進的ダンスミュージックグループ:アーティフィシャルスポーツカー artificial sports car勢がパワーサポート。総合メディアチャートはアーティフィシャルスポーツカー効果も有り、初動で本当かの3位、以降も10位以内をキープ。  artificial sports carは人力と電子を程よくミックスする、5人組のバンド形式。メンバーはKATSU・RYOJI・DEATH・MOZU・MIDORI。皆気さくで、私達は何故か可愛がって貰っている。TACCHは媚びるに走らないメンバーが多く、忌憚なく意見をするので、運営からはつい面倒だなの扱いをされる。そこがartificial sports carにとっては、今どき貴重だと、その度量たるや。そういう柔軟さが、実に海外ツアーもする大御所バンドらしく無い。  2019年11月1日:8thシングル「Come on a Happy Party/It Don't Mean A Thing」を発売。  今回も、 artificial sports carが全面協力参加。急拵えのMVには、予算が大きく付いて、コレオグラファーには、世界武者修行から帰って来た槌家耐磁さんを起用。その大ぶりなブギシェイクダンスは、宴会鉄板となり渾身の一作大ヒットとなる。念願の総合メディアチャート1位の要因として。何度でも見たいのか、動画サイトのフルレングスPVの超右肩上がり効果が大きい。  結成4年目。オーライレブンスレコード局内からも、ほぼ放っておかれ、凋落からのチャート1位はあり得なかった。大きな鍵となるのは、明るいガールポップダンスでつい腰を振りたくなるのが、槌家耐磁さんのポップ全開だと思う。別に制作現場は大爆笑ばかりで、難しい事はしていない。今でも、世間に何故受けたのが不思議で仕方ない。ただ槌家耐磁さんを巡っては、これを機に、グループ内に緊張が迸って行くことになる。  2019年12月1日:9thシングル「Our Christmas/Last Christmas」を発売。  まさかの三連続で、 artificial sports carが全面協力参加した事で、TACCHのネームバリューも上がる。  そして大きなタイアップとして、「Our Christmas」が、90sテイストのドラマ「最終電車に間に合って」の劇中歌効果で大ヒット。シングルはA面もB面もクリスマスシーズンと有って、メディア各所でへビューチューンになり、断トツの総合メディアチャート1位になる。それに伴いサブスクリプションミュージックでは、TACCHの全楽曲が遡って、無数のプレイリストに組み込まれて再評価される。  そう、面を食らったのは何よりTACCHのメンバーだった。このど明るい楽曲の雰囲気で良かったのかと、漸く腑に落ちた。TACCHの世間の評価は、アーティスト然より、やはり取っ付きやすいアイドルだからだ。そして公開収録の番組のいくつかで、余裕のダンスの中、無邪気に咽ぶファンの姿を見れて、堪らずファンを指差し確認しては、皆がステージで笑いをただ堪えていた。売れるって、アイドルって、ここ迄幸せに出来るかだった。  芦間プロデューサーが、売れて良かったですね。私は、それもどうでしょう。  メンバーそれぞれ、普通の青春で盛り上がるSEXと言うより、大人の願望の世界に放り込まれて、SEXする事が多かったですし。SEXは嫌いですか。嫌いな訳ないじゃないですか、女性も男性も。敢えて、女性が先はお分かりよねと、強かに口角を上げる。  私達の、敢えてタイマンインタビューはこれだった。ブランコード高輪ホテルのビジネススイートで、私達は全てを脱ぎ捨てる。そう素敵でしょう。  そう、事務所の団栗社長を通じて、この企画は持ち込まれた。私はそのプレイバックはあと10年先ですよね。ごもっともだけど、今後東北のワンレングス美人に出会えるかねどうかね。即答、会います。  そして、クールビューティーの芦間知音プロデューサーにどうしてもドキュメントを撮らせて下さいと直談判される。枝毛が何ら見当たらないワンレングス。焦りのない佇まい。自由な身なり。仄かな東北人らしい人懐っこさ。女性好きしかしらないシトラスのフレグランス。遠巻きに私の女性傾倒を知ってか、同じ同士としてドキュメンタリー制作に立候補したのだろう。打ち合わせから徐々に距離を詰め、意見を出し合える関係になる。この撮影お話が込み入るわね。そうであろうと、私は報道上がりですから、機材一通り使えますから。タイマン撮影は鮮やかに決まった。  私達は、その濡れた唇を合わせ、互いの乳頭と乳頭が合わさり、嗚咽が漏れる。そして昂まり、普通にベッドで濃厚な時間を過ごし、互いに行き果て、熱った身体癒しながら、インタビュー再開の準備に入る。  私達は全裸で窓辺に立ち、ノンアルコールワインで乾杯する。TACCHのグループクロニクルは、ここ迄順調。編集コンテとしては、アーカイブを差し込むと普通にいい感じになる。ただ、今の事務所の団栗社長は、普通は嫌いな革新派なので、どうなのかな。バレエダンサー等々力一房のドキュメンタリー配信番組は私が監督ですから、ただでは済まない事を知ってますよねと微笑む。その笑み、等々力一房と致したのかと深く察し、私の淡く懐かしい青春の笑いが込み上げる。まさか、私こそまさか。知音と仲良く戯れ合う。一房をおつまみに、甘噛みのままに。  そして都度の情事を経て、今日3度目の衣装替えでインタビュー再開準備。  TACCHクロニクルは、ここ迄がピークだった。3ヶ月連続シングル発売でヒットし、躍進するも。大晦日の全国放送連盟の白黒歌合戦には、10-12月のブレイクでの出場は真の実力なのかと、あらぬ嫌疑を掛けられる。それに白黒歌合戦は、厳正な審査を経て12月の出場者公開会見なので、師走にどうゴリ押しのしようもない。  何よりの厳しいチェックは、2020東京オリンピックの各セレモニー内定中のアクト練習中に、メンバー搬送されて、事故が報道にも上がったが手厳しいものになった。東京オリンピック委員会が、アクト出演の噂を払拭したい為に、横槍が敢然と入ったらしい。世界的スポーツ大会で熱中症搬送の無様、改めてぶり返したくはないは理路整然だ。  私とわたり以外、言いたくないが不甲斐ない。ああ。不意にショッキングピンクのニットノースリーブボディコンシャスに触れると、あれ上も下も履き忘れてる。ちょっと履いていいと、芦間知音プロデューサーに声がけするも。逆に緊張感あって良いですよねと諭される。それもそうよねと、大きく美脚を交差し組み上げると、カント見えましたのテイクを受ける。あらそう。乳頭も服越しに立ってます。別にステージではノーブラほぼだし、皆知ってるでしょうし。まあお話が停滞したら、サービスには持って来いか。  ◇  インタビュー初日は勢い余って、9時から21時迄の収録だった。ダイジェストにした筈だが、つい懐かしさから、そうだったわ、そうよねと、素直に言える私にどうしても驚く。まあ合間に、身体を潤す情事があったので、そんな長丁場かもしれない。これは信用信頼の積み重ねだ。  そして、一旦解散して二日目の再開。ここからが、とても気が重い。ただ目分量として、TACCHは1日語っていられる事だが、都度芦間知音プロデューサーのチェックとコンテ加筆が入る。それはインタビューアーも困るわよねだ。そうねと、本能的に談話を区切れて語れる様になったか、大人の私もある。  そう、どうしても、若さがこそばゆいインタビューは、更に盛り上がる。  私は。TACCHに尽くした感は誰よりも強いので、解散、特にの感慨と何故の憤りは、不思議な綾を螺旋をなす。ただ、時折振り返ると、規律を厳しくしたら、あと2年は楽しめたと思う。しかし、活動期間伸びたところで、20代全てがアイドルはどうかなと、ただ照れくさい。SEXしたいの我慢してアイドルしていますは、それは誠意なのか身体を張ったコントなのか、さっぱりだ。  そして、TACCHの解散は2020年で活動期間満了となる。本来ならば東京2020オリンピックが、この年に開催される筈だったが、アジアから発して世界的な流行病で、全ての歯車がゆっくり止まって行く。何事も接すべからず。これでエンタテインメント界が崩壊しなかったのが、各関係者の愛情があればこそと思う。非常に感謝している。  最後の年表を読み解くべく、芦間知音プロデューサーの収録のキューを待つ。TACCH、その全て、その愛着。私の中では全て燃え尽き、吹っ切れた筈も。その後の皆の事を思うと気は重くなる。蒸し返してどうするのだろう。芦間知音プロデューサーが休憩入れましょうか。知音でまたベッドで奉仕尽くされても、こればかりは埋めようがない。どうせ思い出しSEXで、もやもやするのだから。我慢しくれなくなったら、知音と愛し合いたい。そして、私は始めましょうを告げる。  #2020  2020年1月:アジアから波及した新型熱病が、世界的に流行病となり世界中を席巻する。  変異株が次々遷移し、急増の治療薬を世界的認可するも、長き戦いとなる。ある時々で沈静化するも、罹患者は一向に世界中から消えない。  この流行病のおかげで、人と接する商売は大打撃を受ける。私もTACCH解散後、実に職業的に不安定な事になって、若くして愛憎深い人生を送る事になる。  2020年3月:流行病蔓延を重んじて、急転直下で東京2020オリンピック開催が1年延期となる。  予定されていた全てのオープニングアクトはバラシとなり、TACCH出演内定協議は、正式に白紙となった。今後の開催予定として、競技のみの無観客試合と併せて発表される。  いっそ、中止の方が各方面に後腐れがない筈だが。巨額の設備投資に公費を投じられた以上、日本国と協賛企業の面子があるらしく、何が何でもの東京2020オリンピック開催強硬策が取られる。そうとは言えTACCHは出演白紙。世界と繋がれる夢が、パンと大きく弾けた。  2020年3月ー5月:「Tokyo Meeting」は通年は夏場開催も、東京都オリンピックと被らない様に定期新公演「Tokyo Meeting.5」を3月ー5月に繰り上げ公演だった筈。  筈は、各地で流行病のクラスター大発生から終結が見えず、多くの自粛にならい、「Tokyo Meeting.5」は公演中止へと。  併せて、昨年末のブレイクで企画を練り上げた、サプライズの夏休みのお台場海水浴場隣接ライブ「TOKYO SEVENTH WONDER」の7日長期公演を無期延期発表。エロス美神で際どい衣装だったので、見せられないが今も歯噛みする。  終わりの見えない流行病。この時点で一寸先は闇状態、仕事は感染予防対策されたTACCHの歌唱番組がいくつか位。個人活動は、流行病蔓延で、舞台もロケ番組も行えないので、押し並べてメンバー4kg増量。私だけは、何を意地になってか、稽古場でバレエメソッドを続けキープ。そもそも一日休んでも、勘を逸してしまうのがバレエは全く恐ろしい世界だ。  2020年7月:韓国でWORLD IDOL GRAND FESTIVAL強行開催。  TACCHも日本国からゲストアクターとして参加。自粛か寛容かで世論が真っ二つに割るも、オンライン配信のみの無観客開催で安全安心で無事終える。  抗体ワクチンが出始め、接種した上で韓国のフェスに参加。初めての海外進出ではっちゃける筈も、韓国政府の厳しい監視で、3泊4日ホテルに缶詰状態。差し入れの特別焙煎コーヒーとスイーツのダックワーズは美味しく、美味しかったですのメッセージカードを入れる。後年韓国ロケで、そのメッセージカードを受け取ったパティシエの郭さんと交流を深める。  2020年8月:音楽雑誌ロックオーバージャパンで、音楽プロデューサー小栗泉さんのロングインタビュー。  自身の活動、そしてTACCHのプロデュースも、今年度今後のCDリリースを問われる。それは流行病未だから、CD生産拠点が閉鎖で、音楽業界は再開の見込みが見えない。今後のTACCHの予定は、時を見計らってのみ。  この時点では、泉さんのTACCHの解散宣告は、何ら垣間見えなかった。むしろ、私ゆうりを含むダンスボーカルユニットを構想中で、良いダンサーいるのかと打診をされる。咄嗟に思いついたのは、大オーディションで斜向かいのスペースのあの娘三日月愛佳と、同じレーベルにいますし。さて、素行不良はどうかなで、そのまま保留にされる。  2020年9月−11月:流行病禍につき、オンラインライブ「Heartful, dear ones.2020」をこの期間に5回行う。  そう、余りに仕事がない事が一つと。余りに活動実績が無いと年末の白黒歌合戦への招集も危ういので、採算度外視で、同じグループ会社のオーライレブンスピクチャーの映画スタジオの豪華セットでフル尺を公演する。ただ大問題があった。私以外のメンバーがあるべき筈の観客のレスポンス待っている為、歌い出しも踊りも乱れ大混乱を起こす。私はいつも大きな箱を想定して踊ってるので、来るべき音の前から動き出すのだが、他のメンバーは観客のレスポンスを浴びて安心していた。アイドルグループならそれが当たり前だが、そこは違うからと修正はお願いしたが、オンラインライブ期間中には中々直らず、どうしようゆうりの視線を送られるので、フォーメーションを無視してセンターと準位置に入ってついて来てを促した。オンラインコメントはやっと最後で最高かになる。  ただ公表はしていないが、視聴者数はやっと2万行くか。それだったら武道館行けるかも、視聴地域が分散しており、東アジアの視聴者が多い。それだったら、オンライン時間を何処に持って来るべきか、オンラインチケットの金額を下げるべきか、特典設定をすべきか。思案はしたが、もう白黒歌合戦はすぐそこで、一旦箸を置こうになった。  私としては、むしろオンラインライブにより拘って、世界進出の可能性を見出せたと思う。流行病禍で得た一つの気づきだ。  2020年12月4日:政府の流行病の暫定平癒宣言受け、それを見据えて大晦日の全国放送連盟の白黒歌合戦の選考発表。満を持してTACCHの初出場が決定。  当日の選考発表会にTACCHも呼ばれ、白組トップバッターを飾るサプライズと、華々しい限り。  しかし会見後、メンバー全員と事務所と大事なお話があると、りんかが差し込む。現状、少ない5人体制の先々の拭えない不安定要素から、メンバーと事務所と協議。流行病の制約下では我慢しか出来ないのか。固定給だけではもう限界で。まだ若いうちに個人活動で羽ばたきたい。そこに話す程に不安が湧き続ける。三日三晩の通しの協議の結論は、各メンバーの躍進を願い、TACCHは前向きに大晦日で解散が決定。そして5人で、止む得ずの覚書きを交わす。  そして12月11日、お昼の情報番組に合わせて、解散コメントがプレス発表される。幅広いファン嘆かれるも、流行病禍に師走の出来事なのでそれどころではなく、三日も経つと、労い記事もコメントもさっぱり失せる。アーティストのつもりだったが、TACCHの認識はアイドルなので、星が一つ消えても夜空は夜空だ。  この解散は、私ゆうりとわたりを外した叛逆だ。私にも不満はあるが耐える時期は承知している。一切そんな相談をされた事はない。それをりんかにきつく問い詰めると。ゆうり、一回卒業しようとしたよね。それは芸能界の上同士のお話合いで巻き込まれただけ。そういう自らの脇の甘さは認めないんだ。この繰り返しで緞帳が都度ドーンと降りる。  そして見かねた泉さんが、TACCH終わりにしようと寂しげに告げる。私は知っている。アーティスト小栗泉の楽曲ストックは長短合わせて2500曲はある。その発表の場を奪う、皆酷いと、怒り憤り、知人宅を転々とし、鶯谷の寮に3日は戻らなかった。  2020年12月31日:無観客の全国放送連盟の白黒歌合戦の白組トップバッターはTACCH。流行病禍にエンタテインメントの希望を見せつける。  持ち時間5分内に7曲のアッパーチューンのヒットソングを注ぎ込む。そのフレキシブルはもはや圧倒で、何かが起こってしまったかの生放送で25秒の沈黙を生み出す。司会と出演者が我に返り、完全燃焼の賞賛止まず。  完全燃焼には幾つもの理由がある。私達は前年大ヒットしたにも関わらず、前年の白黒歌合戦出番を逸した。その挽回がまずの命題。ただ、現在流行病禍でエンタテイメントが仮死状態だ。私は、事務所オーライレブンスレコードマネジメントが、本当は理性的で解散宣言を白紙にするとはどうしても願っていた。ただ泉さんにTACCH終了宣言されると、事務所も時期だろうと見極めてしまった様だ。  そもそもで言えば。TACCHの9人で作られたコーラスワーク作品を、現行の5人で無理繰り歌唱している。そう、番組出演のオファーが来て、昔の楽曲を披露しても、クオリティの不完全さが露呈する。ここでこそ増員しようにも、今から新メンバーを募集しても、それは新規作品しか適用しなくなる。女性の生まれ持つキーはとても繊細だ。  音楽プロデューサー小栗泉さんがそれならば、ゼロから仕切り直しの新グループにしようかが、唯一示した行く行くの提案だった。ここで皆が我に帰り、泉さんに見切られたと涙する、この5人でしっかり歌えるのは、りんかだけだが異論あるかね。皆がはっとする。それはそうです、とは言えない。皆が過ちに気づくも手遅れだった。泉さんの思いは、次のプロデュースへ傾倒していた。  師走最後の会合で泉さんが、個人活動するにも、規律は守り大人の嗜みをよくよく考える様にと。差し止められたスクープ記事の封筒が、私ゆうり以外のメンバーに渡されて、ワナワナと震えていた。個人活動を認められたものの、スクープ記事が露見して、今の事務所で干されるのは、過去現在、TACCHの規定路線だった。  まあ大人の嗜みとはなんぞやは、今でも私は思いを巡らす。当事者でなくても、誰かが気づいて諭せないものか。そう、誰かと慰め合いながら、一から紐解くのもグループの有り様の筈だった。仲間であるも、先にライバルであるのは、TACCHならではの特徴だ。自業自得なのに追い落とされるの嫌だ。さて、道半ば過ぎて、ただ気が重い。  そうとは言え、私も結構な差し止めスクープ記事が多い筈なのに、何故か。ただ泉さん曰く、実質繰り上げキャプテンならば最後迄責任を取りれるよねと一瞥される。私も漏れなく、純粋に干される側だった。  まあ、それはそれで、本命の恋人選び個人活動に埋没出来る覚悟を決めた。そうあの方をどうにか振り向かせたい。全力で駄目なら、女性の武器全て見せてようかも、併せて決意した。しかし現実は、干された以上、出会う接点を失い、当時は打ちひしがれた。今は幸せな筈なのに、思い出し涙が伝う。  TACCHはメディア放送にて華々しく解散し、結果、私だけがオーライレブンスレコードマネジメントに残った。  5人体制になった時から、TACCHの下部研究生のThroughoutのプロデュースの運営手伝いもしてみないかと、オーライレブンスレコードマネジメントからお願いされていたので、さあ根を詰めようかだった。ただTACCHの解散より先にThroughoutは発展的解散をしていたので、とほほと、本当に仕事を失う。  ただ、入れ替わりの激しいThroughoutにどんな娘がいたのかなと総勢53名のファイリングを見ると、その1割は芸能界で今も活動している。レーベル直轄と広告宣伝社の協力体制の事務所オーラレコードマネジメントでも、母体が新設事務所だと、かなり目が届かない事がある。TACCHのSEXチェック見ると、それは明らかだろう。自由過ぎたね本当。  そうとは言え事務所に顔出しておけば、何かしらのお仕事の声掛けされると思って、大オーディションのプロフィールのファイリング整理を自主的に行う。  私の記憶と、スタッフの当時の証言から、大オーディションのパフォーマンスの覚えている限りを、大きな付箋紙に書き殴り、あとひと頑張りの娘を再ストックして行った。私はスタッフになりきって、お元気にされてますかの連絡を取る。1/4は事務所に所属して、3/4は進学や就職をしていた。親御さん曰くいい夢を見させて貰いましたで、丁重に電話が終わる。表も裏もある芸能界を鑑みると、普通の生活を送るのが、ごく当然かとは思う。  そんな地道な作業も、2ヶ月で完遂して、する事が無くなった。オーライレブンスレコードマネジメントを辞めるしかないだろうかだ。  ただ、TACCHが解散で基本給が無くなるも、歩合給の飛び込み仕事の薄給でも無いよりはましだ。そうとは言えアルバイトも並行して続けないと生活出来ないのが、どうに通帳と睨めっこして、もんどり打ってた。まあ、日本国の徴税はしんどいなとは、その時身に包まされる。  そんな時期に、今いるプライベート個人事務所オフィスだんぐりの団栗治郎社長に声を掛けられる。まあそのー、複雑な移籍金のやり取りがやや拗れるも、春には何とか、オーライレブンスレコードマネジメントを円満移籍した。再び月給制度になるも、一からのスタートで、下積みの苦労を教えられる。  そうこうで二日目もTACCH三昧で、やや早めに切り上がる。芦間知音プロデューサーの編集作業メモ起こしを拾い上げると、有終の美を飾っている。綺麗事過ぎる。私の管まきが、堰を切り、違うわ、そうでしょう。そうですねになる迄、大人気なく怒りが沸々湧いてくる。そのお怒りは、これからの、個別のメンバーのお話で聞きますからで、やっと溜飲を下す。  そして、インタビューの順調さからの開放感で、全裸で仕事終わりのワインで乾杯を交わす。ただ、知音は従順だが、私の事をどうにも勘違いしている事が、節々の発言と情事の手順で分かる。  知音のツボは、私の均整の取れたふくらはぎで、飽きもせず食いつく。いや確かに私の感度のポイントではあるが、それは私の興奮が高まった上での手順だ。  私は黒髪ワンレングスで、さも女性相手だとネコにされるが、れっきとしたタチで、そんじょそこらの男性より腰使いが上手い。故に、丁寧に攻められるのはそれはそれで嬉しいが、ここがありがちな、どうにも波長が合わない。私のお箸が先でしょう。そういう事で凄い攻めて良い。ええ、お任せしますと微笑ましい笑顔を返される。そうこなくちゃ。  私は、知音を四つん這いにすると、お尻を高く持ち上げる。 「知音、カントもお尻の穴も、緊張し切って開いていないわよ。私に心が開けないの、この歳でうぶなのね」 「ごめんなさい、ああ、でも頑張りますか」 「それ、本当ね」  私は知音の筋肉質のお尻を、猫撫で声でヒタヒタ叩き、ひくつくと、膝を徐々に広げる。知音は、全て見られている興奮なのか、やや感度が良い。 「知音は、こういうのも好きなのね。とてもいやらしいのに、美しいわよ」 「ああ、あう、旦那がアクセントとして仕込んでくれました。もっと、優里さんの愛情を分けて下さい」  私は尚も、知音のお尻をヒタヒタ叩きながら、思う。そこそこペニスに、興味本位だけの性技を仕込まれて、これでは不憫過ぎる。ごく普通な家庭の事情は、どうしても複雑だ。知音も、顔が好きとか、そっちの取り繕いか。まあ知音はインテリではあるので。  そして私は、知音の赤くなったお尻をたっぷり揉み尽くすと、カントが愛液で光って来たので、味わう事にした。舌をつんと伸ばし、愛液を掬う。さて、女性向けの甘い味わいに仕上がっていないのが、観念的両性愛者の哀れか。これはこれで、私が仕上げる新鮮さはある。私は、舌を都度都度尖らせ、感度の強い部位へと舐り、お茶目に舌でクリトリスを突く。 「あん、あん、いい、いいです、最高です。もっと下さい」 「そうよ、素敵でしょう」これは知音のカントが潤っていくので偽りはなかった。私は、クリトリスも丁寧に舐り始める。 「もう、いい、素敵です。もっと攻めて」 「でも、知音は、男性が好きなんでしょうと」私は、中指のソフトサイズで、知音の膣内をグライドさせる。 「ああ、ああ、これもいいの。優里さん愛してます。もう駄目、行く、行く、行っちゃう」 「そうね素敵ね、愛の世界。良いのよ、見せて、知音の行く所を」 「もう駄目、ごめんなさい、行く、行く、行っく!」  知音が恥じらいも無く咽ぶと、膣より真っ直ぐに潮がピュッと吹かれる。思ったより少ない、堅物か。しかし知音は痙攣し、カントもお尻の穴もヒクヒクと開き、次を待ち侘びる。知音は、やれば仕上がる女性だ。これは開発し甲斐がある。  可哀想な知音。才媛過ぎて高嶺の花。きっと今迄、頭が良過ぎて盟友とやらとしかのSEXに恵まれていなかったのだな。IQはあるに越した事はないが、それは一エッセンスだ。  私は知音の上半身を起こし、どれだけ熟れ切ったのか感度を確かめるべく、長く濃厚なキスを交わす。知音の顎は緩くなり、大量の涎を垂らしなら、私に吸い付く。エロスに傾倒、いいじゃない。私に心を許し、女性ならでは芳醇さが増している。これから益々甘くなりなさい、私を満足させる為にも。  私は淑女になり、美神への階段をこれからも上がる。それは己一人の満足だけでは、決して前に進めない。知音は早々に上達するだろう。このドキュメント映像収録は、公私共にかなり当たりらしい。
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