推しの速水さん

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「久保田君、中島さん、良かったよ」 スーツ姿の拓海さんが満面の笑みを浮かべた。幻でもなく、本当に拓海さんだ。拓海さんが出張でいない日だったから撮影の日にしてもらったのに。 恥ずかしさがこみ上がってくる。 拓海さんにアイドルコスプレ見られた。逃げ出したい。 「雨宮部長、出張では?」 久保田が拓海さんに視線を向ける。 「中島さんのコスプレが見たかったから、明日にズラした」 久保田が苦笑いを浮かべる。 「中島さん、雨宮部長に愛されてますね」 「中島さん、可愛いよ。ツインテール、家でもしてよ」 「部長、仕事中ですので、そういう発言は控えて下さい。失礼します」 拓海さんに一礼をして、スタジオを出る。 そして早足で控室に戻った。 恥ずかしくて拓海さんの顔が見られなかった。なんで拓海さん、いるのよ。 家に帰ったら絶対にからかわれる。 メイクを落そうと鏡の前に座った時、コンコンと控室のドアがノックされた。 返事をすると、「入っていい?」という拓海さんの声がした。 「ダメです」と返すと、ガチャっと控室のドアが開き、拓海さんが入って来た。 「奈々ちゃん、怒ってる?」 鏡越しに私の後ろに立つ拓海さんが見える。 今日も拓海さん、素敵だなと、思わず見惚れてしまう。 「別に」 いじけて答えると、拓海さんがクスッと笑った。 「久保田君に聞いたよ。俺にアイドルコスプレ見られるのが恥ずかしいから俺が出張でいない日を撮影の日にしたんだって?」 「そうですよ。拓海さんには見られたくなかったんです」 「どうして?」 「だって、三十過ぎの女がアイドルの恰好なんてあまりにも痛いでしょ?」 「奈々ちゃんはどんな格好をしても可愛いし、綺麗だよ」 拓海さんの両腕が胸の前に回って来て、後ろからぎゅっと抱きしめられる。 「甘やかさないで下さい。調子に乗りますから」 「奈々ちゃんはいつだって綺麗だよ。本当にそう思っているから」 耳元に拓海さんの甘い声が囁かれる。 胸がキュンキュンする。 いじけた気持ちがもうなくなっちゃった。 「拓海さん、だから甘やかさないで下さい」 「可愛い子は甘やかしたくなるんだよ」 拓海さんの方を見上げると、チュッと唇にキスをされる。 数えきれない程のキスをもう拓海さんとしたけど、何度キスしても拓海さんとのキスは胸に響く。 今日も拓海さんが大好き。 終わり ―――――――――――――――――――― 【あとがき&お知らせ】 今回は「推しの速水さん」の宣伝を奈々ちゃんにしてもらいました。 連載始まったばかりです。よろしかったら遊びに来て下さい。 「推しの速水さん」 https://estar.jp/novels/26149070 イケメン編集者×内気な女子大生の恋? 2023.9.29
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