ハンカチ

3/4
前へ
/399ページ
次へ
「何か飲み物でも買ってきましょうか?」 上映が終わってシアタールームが明るくなると、ハンカチの人に聞かれた。 「い、いえ」 喉が渇いていたけど、そこまでお世話になるのは気が引ける。 泣いた顔を見られるのが恥ずかしくて、ハンカチで顔を抑えたまま、何もいらない事を伝える為に首を振った。 「そうですか。では、僕はこれで」 隣で立ち上がる気配がした。 あと三本映画が残っていたから帰るとは思わなかった。 「あ、あの」 ハンカチから顔をあげると、もう男の人はいない。 ハンカチ返さなきゃ。 お礼も。 男の人を追いかけてロビーに出た。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2149人が本棚に入れています
本棚に追加