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今の話
今
函館の上空をぐるぐると旋回を続ける機体がある。
地上から見る形はまさにMiG-25にそっくりだったが、今のそれはMiG-31であった。
翼面荷重の大きさからか旋回の半径は大きく、その振る舞いが不気味さを際立たせている。
「空を見ろ!鳥だ!飛行機だ!...飛行機だ。」
「...まあ、今亡命したい気持ちはわかる。」
「でも今時MiG-31なんて亡命の手土産だとしても誰も欲しがらないだらうな...」
その不気味さにも関わらず人々は落ち着いて各々が思ったことを空の向こうの他人事のように口にしていた。
二人乗りだからか、函館空港はすぐに見つけられたようで、今回は2周と半分旋回したところで着陸する。
先駆者と同じように風防がぱかっと割れて中から二人のパイロットが降りてくる。
そして、すぐにやって来た北海道の警察が皮肉めいた口調で話しかける。
「二番乗りおめでとうございます。
一位との差は半世紀ですね。」
パイロットは笑顔でそれに返す。
「三番目はすぐ来るよ。」
その後、沢山やって来た彼ら彼女らとすったもんだはあったにせよ、平和に仲良く暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
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