ホームレスハウスに舞い降りた性天使【第1章】

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彼女の部屋は周りとは違う、立派な作りだった。 立派、といっても、結局素材は段ボールなんだけど、頑丈だし、内装も清潔感がある。 ありとあらゆるものがそこには備わっているし、彼女が望むものは何でも手に入った。 しかし、それは彼女が特別なのであって、彼女はそこには住んでいない。 たまにやってくるだけだ。 でも彼女の部屋をいつも綺麗に保つ為に、誰も苦労を惜しまなかった。 我々の住み家といえば、取り敢えず、雨風が凌げて、眠れればいいという、ほんと簡素な段ボールハウスだ。 まだ、ハウスを構えられる奴はいい。 ハウスを許可されない人間はその辺で寝食するしかない。 まぁ、最近であれば、雨風凌げる場所はそこいらにあるので、孤独に耐えられる者なら集まらずとも暮らす事は出来るだろう。 勿論ハウス住みにもランクがある。 テレビが置かれているハウスもあれば縄張り長もいる。 ホームレスになると気楽でいいと思われがちだが、何となく集まってしまうのは、いつどこで仕事があって、食べ物が調達出きるかという情報共有や、仲良くなるとうまい話や酒盛りに呼んで貰える。 いざという時も何かと集団の方が楽なのだ。 とはいえ、ホームレスといえば、社会不適合者のイメージが強い。 確かに一部そうである。 人間関係や家庭に疲れ逃げて来たものが大半を占める。 けれど、同じホームレスでも最近は昔と違い若い子も増えているのは気のせいか、、? けれど、集団やしがらみが嫌でホームレスになったのに、ホームレスでも集団というのは矛盾しているかも知れない。 が、絶対的に違うのが社会に対する責任感で、ここの人達はプライベートには決して口出しをして来ないのが気楽なところだ。 私がこの地域に住み始めて約15年位が経つ。 ホームレスとしてはベテランなのか初心者なのか分からないが、取り敢えず公園にテントとハウスを持ち、それなりに生活出来ている。 食料調達というのは、実はそんなに大変ではない。 炊き出しや、教会等のスケジュールは管理しているし、懇意にしている店から廃棄食料が貰える。 たまに小銭を稼ぐとワンカップとタバコに消える。 寝たい時に寝て起きたい時に起きる。 ただ、用心しなくてはならないのは身体の管理だ。 そうそう身元を明かせない我々が簡単に病院に行く事は出来ないし、手術や入院なんて出来ない。 勿論、簡単な治療は身元を明かさず診てくれる施設はある。
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