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しつこい勧誘
…ピンポーン
「…またか」
目覚めのアラームにしては柔らかいが、日曜の早朝6時に聞くと誰もがふつふつと怒りがこみ上げてくるであろうチャイム音。
一般家庭なら宅急便とかミルクの配達とかで、家の中にいる誰かが玄関にダッシュするだろうが、僕は一人暮らしな上に、そもそもミルクの配達も宅急便を頼んだ記憶もない。
「はーーい、今でますよ…」
おそらく聞こえるであろう声量でそう答え、のそのそと布団から出て玄関へ向かう
ガチャッ
チェーンだけ残して玄関のドアを開ける、まぁこんな事しなくてもなんとなく、誰が来たかは想像がついていた。
「お、おはようございます…ぽいかな」
やはりこの変な語尾で宗教の勧誘をしてくる男の子だ。
二か月前くらいから週に一回この時間に必ずやってくるようになった。
「おはよ、今日も来たの?」
「前回も前々回来た時もちゃんとお話を聞いていただけなかったので、今日こそと思い来ちゃいましたぽいかな」
「だって毎回同じ話をするんだもん、もう飽きちゃったよ」
こんなことを言いながら何故玄関まで出てきてしまうのか、それはこの男の子がどこか不思議な雰囲気を醸しているからだ。
服装、顔も布で覆っている為は全身黒で中東衣装のような恰好をしている目元しかみえないが綺麗で凛々しい目がしっかりとこちらを見据えている。
「俺も何回も同じ話をしたくはないですよ、少しは考えてくれたぽいかな?」
「考えるも何も、詳しい話はここではできないから、まずは俺の国に来て手続きをしてほしいとか無理がありすぎるから」
「むむむ…」
「てか、そんなに僕に固執しなくても、他にいっぱい人居るんだから、例えば俺の隣人とか勧誘してみたら?」
「むぅぅぅぅ…」
「もういいかな、俺もそろそろ二度寝したくなってきたから」
そう言って無慈悲にもドアを閉めようとする。
「…どうやったら折れてくれますか…」
っとボソッと彼がつぶやいた。
「折れるもなにも、宗教とか神様とかよくわからないし、お布施?とかもできないだろうからってだけだよ」
少しの間黙り込んで、急に。
「…わかりました」
小さく呟いたが、どことなく怒ったような力強さがあったが、男の子は玄関から離れ、そのまま帰ってしまった。
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