最期の顔

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「そうか。じゃあ、話してみろ」  何を? とかろうじて口には出さず、眉根を寄せる。 「絵に話しかけているつもりでさぁ、俺に話しかけてみろってこと。だってお前、話しかけても無視すんじゃん。ずっと、絵描いているか画集見てるばかりでさ」  それは無駄な事に、労力を使いたくなかっただけの話。  僕にとって、人間関係など不要なものであって、絵の世界が自分の全てなのだ。  学校だって正直行くのも、時間の無駄だと思っている。普通の授業を受けるよりも、絵画教室に行っている方が有意義だからだ。  だけど高校を出ないと、留学も美大も行かせないという両親の一言が、僕をこの場所に引き留めていた。 「何度も言ってると思うけどさー、俺はお前の絵が好きなんだよ」  だから何だとばかりに、僕は眉間の皺を深める。その事と、このくだらないやり取りに何が関係あるのか謎だった。 「だからさぁ、俺の絵も描いてよ。こんな感じで」  高羽が腕を組んで、やや斜めに体を向けて立ちポーズを決める。  僕の人物画を見たことがないから、高羽はそんな事が言えるのだ。  僕は返事の代わりに、額縁を近くの机に乗せた。 「お、おいっ」と言って慌てふためく高羽に、僕は手に取ったスケッチブックをペラペラ巡る。 ――頭がおかしい、馬鹿にしているのか、気色悪い。  何度となく周囲から言われた誹謗中傷。別に今更、高羽に言われたところで、何とも思わない。  僕は絵画教室の題材で描いたモデルの絵を開くと、高羽の方に向けた。大事なスケッチブックを高羽に触らせたくなくて、僕は距離を保つ。
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