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「どうして……? どうしてなの? 答えてよっ!! …………答えてよ……お兄ちゃん」
雨が降る。赤が滲む。地面にあるのは涙の水溜まり。
カメラの音が絶え間なく聴こえてくる。野次馬の叫び声や警察の怒気に満ちた制止声が、音と音の間で轟き合う。
時間が経てば、声も消えるだろう。野次馬も消えるだろう。
目の前の死体も――消えるだろう。
どうしてこんなことになったのか――彼女は理解できず、理解できなかったことを悔いていた。
ただ、理解できなくても認めなければならない事がある。
――それは兄がビルから落ちて死んだという事実だった。
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