8人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
少しだけ振り向いてまた歩き出した
アタシの肩を掴む女。
訳あってその三日前から機嫌が悪かった。
雨に少し濡れた、か細い右肩を荒々しく掴むとくるっと身体の向きを変えて大きく深呼吸をして、元来大きな瞳をさらに見開いた。
「何なん、その怖い顔」
きっとかなり走って来たのだろう。
しばらく肩で息を整えていた。
「栞、聞いた?」
「何を?」
「正道のこと」
ーーー正道のこと?
瀬川正道。三日前までアタシの元彼だった。
未来日記をアタシに提案して始めた男。
「ううん、聞いてない」
「…」
すると急に下を向いて黙りこくった女をしばらく見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!