途切れた恋の便り

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―――それに初めて会ったのが最初で最後だったりもする。 ―――そんな彼女を今でも愛しているだなんて、人によっては馬鹿にする者もいるだろう。 ―――ただ最初の頃は文通ができていて、互いの想いを確認し合っていたんだ。 ―――たとえ会えなくても十分だと思う。 ―――僕やエマの家庭の事情もあり今までは会うことができなかった。 ―――きっと今会ったら互いに容姿が変わっていて驚くだろうな。 ―――エマにいたっては物凄く綺麗になっている気がする。 一通り話を聞いた父はゆっくりとした所作で葉巻に火をつけた。 「そんな昔に出会っていたんだな」 「はい。 出会った時から僕は彼女が運命の人だと感じています」 「運命、か・・・」 「その彼女とは今でも連絡を取っているの?」 母が確信をつく質問をしてきた。 「・・・いえ」 「どうして取っていないの?」 現状では一方的に手紙を送っているだけになっている。 いくら手紙を送っても何年も返事がない。 ―――・・・なんてことは言えないよな。 ―――5年前に突然音信不通になった。 ―――手紙がパタリと来なくなったんだ。 ―――その理由は僕には分からない。 そこで嫌な予感が頭を過った。 ―――・・・もしかしてエマは僕に飽きた? ―――だから手紙の返事をくれないのか? ―――それなら一言くらいあってもいいだろう。 ―――優しい彼女だから僕が不安になるような、自ら連絡を途絶えさせるなんてことはしないはずだ。 ―――それにエマが病気で数年寝込んでいる可能性もある。 ―――だから返事の無理強いはしなかった。 ―――でも何故連絡を取っていないのかと聞かれると・・・。 困っているとノックが聞こえた。 エマのことを調べにいった使用人かと思ったが、現れたのは許嫁のエルザだった。 「おぉ、エルザか」 エルザは恭しくお辞儀をした。 ―――エルザとは僕が幼少期の頃から出会い、交流している。 ―――だけど僕の気持ちはエマと出会ってからずっとエマに傾いていた。 「カイン様。 想う人がおられるというのは本当のことなのですか?」 エルザは寂しそうに言った。 確かにエマのことが今でも好きだが、エルザのことを嫌いなわけではない。 もしエマがいなければエルザとの婚姻に何の躊躇もなかったはずだ。 「あぁ、本当だよ」 「・・・」 それでも今はエマのことを忘れるわけにはいかない。 返事がないのは自分に何か非があった可能性もある。 しかし、それすらも分からないのだ。 「カイン。 エルザと二人で話してきなさい」 父にそう言われカインはエルザの前まで移動した。 「エルザはどうしてそんなに悲しんでいるんだ?」 「それは・・・」 「君は僕との婚約を強いられて嬉しく思っていたのか?」 「・・・これが貴族としての運命なのです。 カイン様を愛すことができるよう今まで努力してきました」 「・・・」 ―――貴族としての運命だということは分かる。 ―――努力して相手を好きにならなければならないということも。 ―――でも好きでもないのに無理に努力して好きになってもらっても僕はちっとも嬉しくない。 ―――それはきっとエルザだってそうだ。 「カイン様が想うエマ様とは今は連絡を取っていないと仰っていましたよね」 「・・・あぁ」 「カイン様からは連絡を取っているのですか?」 「僕からはそうだね」 「それはいつまでお続けになるつもりですか?」 「・・・」 「もしこのまま一生連絡が来なかったら? カイン様はそれでもいいのですか?」 「僕は・・・」 答えを言おうとしたところで再び扉が開いた。 血相を変えた使用人がそこに現れる。 「大変です!!」 「どうした?」 「エマ様にご連絡が取れるのかを確認いたしました」 「あぁ、それで?」 「・・・5年前に姿を消して以来、見つかっていないと」 「ッ・・・!?」 その言葉に一番驚いたのはカインだった。
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