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どう答えようかと迷ったが、マミは目をそらさないため渋々答えることにした。
「・・・好きだよ」
エマは恥ずかしくて視線をそらした。 ただ即答できなかったのは恥ずかしかったからというだけではなく、ここまで手紙が来なかったことで心にモヤがかかっていたからでもあった。
ただそんな内情を知らないマミは素直に笑顔になっている。
「やっぱり! じゃあ将来はカインと結婚するの!?」
「それはどうだろう・・・」
「え、しないの?」
マミはキョトンとした顔をした。
―――カインからは貴族だと告げられていない。
―――だけどカインが送ってくれる手紙やカインと出会った時の服装からして貴族だとすぐに分かった。
―――それはきっと私に気を遣ってくれているからだ。
―――そして同様に私が送る古っぽい手紙や出会った時の服装から庶民だときっと気付いていると思う。
―――・・・だから私のこの恋は実らない。
―――それでもいいからカインとはずっと繋がっていたいと思っていたけど・・・。
今は連絡すらも取れなくなってしまっていた。 カインを信じる気持ちは確かにあるが不安でもある。
―――それにこういう中途半端な状態だと新しい恋にも踏み出せない。
もし拒絶したいとカインが思っているのなら、それをハッキリと言ってほしいのだ。
「カインとは一度しか会っていないんだよね?」
「そうだね。 少し先の街で」
「どんな人だったの!?」
「とても心優しくてカッコ良い人だよ。 剣を振るっている姿に思わず見とれちゃったんだ」
「へぇ・・・!」
マミは目を輝かせ話を聞いている。 マミは貴族に会ったことが一度もなかった。 この村には貴族なんてそもそもいないのだ。
「それに庶民の私にも色々と気を遣ってくれた。 貴族の人とあまり関わったことはないけどそこまでフレンドリーに関わってくれる人は初めてだった」
「他には!?」
「カインのことは文通している間にたくさん知れたの。 カインの好きな遊びや好きな色。 好きな食べ物とか!」
それを聞いてマミはうっとりとした顔で尋ねてきた。
「お姉ちゃんは今カインと会ってもまだカインを好きでいられる自信はあるの?」
「・・・あるよ。 どんな容姿になっていようともきっとこの想いは変わらない」
そう言うとマミは嬉しそうに微笑んだ。
「朝ご飯の時間よー!」
リビングから母の声が聞こえてきた。
「朝ご飯だって。 行こう!」
「うん!」
エマの話でマミはすっかり目が覚めたのか布団から飛び出した。
―――いつも私の話を興味あり気に聞いてくれる。
―――今までカインのことを隠してきたからこうして誰かに話せるのは嬉しい。
「エマー! ちょっとお母さんの部屋に寄ってきてくれるー?」
エマの部屋を出たところで母にそう言われた。
「どうしてー?」
「少し寒いから何でもいいから羽織るものを持ってきてほしいのよー」
「分かったー!」
マミを先にリビングへ行かせエマは母の部屋へ向かった。 クローゼットを開け丁度よさそうな羽織ものを手に取る。
「そう言えばお母さんの部屋ってあまり入ったことな・・・。 うん?」
そこでクローゼットの奥に違和感を感じた。 クローゼットは衣類がぎっしり詰まっていてほとんど空いたスペースがなかったが、その奥に押し込められるように大きな袋が置いてあったからだ。
それが丁寧に整頓されていたなら分かるが、明らかにそこだけ無理矢理詰めたような形になっていた。
「何だろう、これ?」
普段なら見逃していたのかもしれない。 ただこの時は興味本位で手を伸ばしてしまっていた。 そこで驚くべきものを目にすることになる。
「・・・え?」
その袋の中にはカインからの大量の手紙が詰まっていたのだから。
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