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 翌日の勤務中は始終うわの空で、僕は使い物にならなかった。  一応、職場内でもしっかり者として認識されていたため、今日は頭の上にお花が咲いてる、と先輩たちからからかわれていた時、受付の女の子が来客を知らせにやって来た。 「芳村さん!」 「あ、麻生様。こんばんは」  予約なしでやって来たのは、麻生さんだった。  お見合い予定日だった昨日、僕は集合場所だったロビーを離れ、ラウンジで眠りこけてしまっていたため、彼女が果たしてやって来たのかどうか、はっきりとわからないまま今日を迎えていた。  午前中に一度送った謝罪のメールにまだ返信はなかったが、彼女は直接話をしに来てくれたようだ。 「あの、麻生様、本当にいろいろすみませんでした」  彼女の対応次第で僕は会社をクビになるのだが、謝罪後、顔を上げても麻生さんはにっこり上機嫌だった。
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