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「よっしー、さっきのお客さんどうだった?」
「うちで本登録してくださいました」
おお~、とスタッフルーム内にどよめきが起こる。
さきほどの女性は予約なしの飛びこみだったため、仮登録だけでもと思っていたのだが、運よく本登録の手続きまでしてくれた。
「さすがよっしー。ほら、これ食べなよ。好きでしょ、ぬれせんべい」
「いただきます」
パイプ椅子に腰かけ、出されたぬれせんべいと熱いほうじ茶をいただく。
ねっとりした食感にしょう油の香ばしさが絶妙に合う。
九月に入ってもまだまだ汗ばむ日が続く中、冷房の効いた室内で飲む熱々のほうじ茶には、冬にこたつで食べるアイスと同じ種類の幸せがある。
うちの結婚相談所のスタッフの平均年齢は四十歳だ。
広報や事務などのスタッフには二十代や三十代の人間が多く、平均年齢を底上げしているのはこの結婚アドバイザーのスタッフである。
僕をのぞく全員が、女性であり既婚者であり子育てを経験し一部には孫まで存在する人生のベテランである。
結婚相談に来る人たちはやはり、経験値の少ない若造より人生の先輩に相談に乗ってもらいたいと思うものだ。
そんな中、唯一の男性でぎりぎり二十代で未婚で恋愛経験皆無のゲイという異色の僕はというと、就職したての頃は多少この仕事に戸惑ったり失敗したりはしたものの、どこかじじむさいところがあるのだろう、ベテランの先輩たちに若年寄だとからかわれつつもかわいがられ、今ではこの集団にとけこんで、仕事上ではうまく立ち回れていたりする。
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