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言いたい放題の先輩たちから順番に回ってきた資料が、僕の手元で止まる。
高久侑。二十九歳。飲食店経営。181センチ。A型。
なんとまあ整った顔をしてるんだろう。
僕は正直驚いた。
この仕事をしていて、ここまで女性に困っていなさそうな男性会員のプロフィールを見たことがなかった。
間違って俳優の宣材写真が混じってしまったのかと思ったほどだ。
濃紺のストライプスーツを着こなした全身写真。
長身の割りに顔が小さくて脚は長く、全身のバランスが整っている。
バストアップの写真は控えめに微笑んでいて、大人の色気と母性本能をくすぐりそうなキュートさが表情の中に絶妙な加減で混じっていた。
先輩の言ったとおり派手な顔立ちではないけれど、むしろ和を感じる派手すぎないところに誠実な印象を受ける。
「あらまぁ、よっしー、この人よっぽどタイプだったんだね」
驚きすぎて、けっこう長いあいだ呆然とプロフィールを眺めていると、先輩たちがなにやら勘違いを始めた。
「違いますよ。こんなモテそうな人が登録するんだってびっくりしてただけです」
「顔が赤いよ、よっしー」
指摘され、そんなはずはないと思いながら資料で顔を隠す。
あとはなにを言っても聞いてもらえなかった。
はいはい、わかったわかったと僕をいなし、にやにやしながら先輩たちは帰っていった。
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