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ベッドでとなり同士になってから、高久さんの醸す雰囲気が甘くなっている気がしていた。
この勢いのまま、流されてしまいたくもあったのだけど、その前に。
「ひとつ聞きたいことがあって」
「なんですか」
どうしても気になっていたこと。
「高久さんは、うちの結婚相談所にいつまで登録しているんですか」
「え」
「あの、今すぐ解約してほしいんですけど。って僕が言うとだめですか」
どんな反応が返ってくるだろう。
不安で、絡められた指をぎゅっと握る。
高久さんはストレートだ。
女性を好きになれるし、結婚も考えていた。
こんな結婚適齢期のいい男を、男の自分がひとりで独占していいものなのか。
普通に考えれば、それはいけないことな気がする。
誰かに非難されたら僕はなにも言い返せない。
だけどそんなもっともな一般論は、高久さんを前にすると透明になって見えなくなってしまう。
濡れた黒目に吸いこまれるように彼を見つめ続けていると、自分の欲望しか考えられなくなる。
「誰とも結婚しないでください」
「しませんよ」
「このさきもずっと、僕と一緒にいてほしいんです」
わがままが過ぎると嫌われてしまう。
重たい言葉は相手の負担になって蓄積される。
どこかで聞いた恋愛における知識も、今は恐怖にすり替える余裕がない。
そんな優しい目で見られたら、心の全部を吐露してしまいそうだ。
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