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 あれで写真写りが悪かったのだ。  動く高久侑を見た僕の最初の感想である。  来店予定の五分前に資料を再確認しつつ準備を整えていたら、受付の二十代の女性がスタッフルームに入ってくるなり騒ぎ出した。 「イケメンが来ました!」  小声だけれどハイテンションですごい報告をしたかと思うと、事務の女性スタッフ数人と一緒になって客用ソファチェアに座る高久さんをばれないようこっそりのぞき見、誰がお茶を運ぶかの言い争いに勃発しそうな話し合いを始めた。 「緊張してお茶こぼしちゃだめですよ」と声をかけ、一瞬和んだ彼女たちを横目に高久さんの待つテーブルへ向かう。 「いらっしゃいませ、高久様。お待ちしておりました」  声をかけ頭を下げると、音もさせずすっと立ち上がった。  本当にスタイルがいい。  身長は和人とそんなに変わらないが、アメフトで鍛えたがっしり体型の弟とは違ってモデルのような佇まいだ。  事前情報でわかっていたにもかかわらず、僕は目の前の男のオーラに圧倒された。
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