ゆする男と ゆすらない男

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 とある地方都市の街中、数年前に再開発され真新しいビルに隠れるようにほっそりと建つ建物。 おそらく建築当時はハイカラな建物と言われていたであろう。「創建ビルヂング」といかめしい名前がつけられているが、古い木像の五階建てアパートである。  外見はいかめしく、頑強そうであるが、何しろ古い木造五階建て。地震や火災などがあれば、ひとたまりもないだろう。それでも住人はいるようだ。よほど家賃が安いのだろうか。  各階に一軒ずつの貸家となっている。小さなキッチンとバスルーム、それに広いリビングルームを備え、それぞれ六十平米ほどの広さだろうか。  一階には70歳は越えているだろう白髪の管理人が住んでおり、二階の201号室にはは五十代とおぼしき熟年男性が借りている このシブイ熟年男性は、この住まいをどうやらセカンドハウスとして使っているらしい。何やら仕事の打ち合わせをしたり、ホームパーテイを開いたり、来客の出入りは激しい。そういえば女性が泊まっていくこともある。  三階の301号室には三十歳前後の痩せた茶髪の男性。内気そうなおとなしい男である。何でもテレビ番組の脚本を書いているとか。自宅に引きこもっていることが多い、いわゆるオタク男。だが、出かけるときは派手な服装にサングラスを掛けたりしている。あまり似合っているとは言えないが。  四階と五階は現在空室である。
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