8人が本棚に入れています
本棚に追加
「娘を里に帰そうと思う」
ヒキガエルはぎょっとした。急にどうしたんだ、こいつ。
「ええ、どうしてですか? すっかりうまくいっているとばかり思っておりましたのに」
コンドルは心持ちやつれたようだ。小さな声を絞り出すように、懺悔するように次の言葉を口にした。
「どうやら私は思い違いをしていたようだ。娘は、おそらく私のことなど好きではないんだ。申し訳なくて、顔も見れなくなってしまった。もう、終わりにしようと思っている」
ほう、鈍い鳥頭でもようやく気付いたか。これでも十分報復にはなってるかな、こいつこんなにやつれちまった。ザマぁねえ。って、言ってる場合じゃねえな。こんなことで俺の計画を台無しにされてたまるか。あと一息なのに。
ヒキガエルは思い切り笑って吹き出した。コンドルはぎょっとしたようだ。
「何を言い出すかと思えば、アハハハ、いやね、すみません。余りに突拍子もない事を仰られるもんですから。全く、人の気持ちってのはわからないもんですねえ。ハハ、この前同じような事を言ってた人がいますよ。どうも自分は好きな人に嫌われたようだって。最近、自分の事を全然見てくれないのだと、嘆いている可愛らしいお嬢さんがいましたっけ」
「……まさか」
「全く、お二人して困ったものです。そろそろ次の儀式の時期ですから、それが終わればちゃーんとお互い気持ちを確かめ合えばいいじゃないですか」
「次の、儀式?」
「そうです、娘の里に挨拶に行くんですよ。手順はちゃんとお教えいたしますから、御安心なさい」
最初のコメントを投稿しよう!