8人が本棚に入れています
本棚に追加
仕上げに
体の具合が回復すると、久しぶりにマリーは水浴びに川へ降りた。天気は快晴で、南風が暖かな空気を運んでくる。とても気分が良かった。
丁寧に身体を洗いながらマリーは色々と思いをめぐらせた。この数週間の事は、記憶が霞んでいてぼんやりとしか思い出せない。ただ、とても優しい若者が自分を介抱してくれていたような記憶が薄っすらと残っている。あれは誰だったのだろう。
もしかすると熱に浮かされて見た幻想かもしれない。意識がハッキリしだしてからは、一度も姿を見なかった。居るのは、あのおぞましいコンドルだけだ。やっぱりこれが現実だ。
マリーは清冽で心地よい温度の水に髪を浸し、洗い始める。
けれど、とマリーは思う。意識が戻って気付いたのだが、この所コンドルの様子がおかしい。なんだか、塞ぎこんでいるように見える。それに毎日の食事が生肉だけではなくなった。これはどうしたというのだろう。木の実や果物を持って帰ってくる。コンドルはそれらを食べはしない。自分のためにそういった食べ物を持ち帰ってくるのだ。そして自分の方をあまり見なくなった。食べ物を置くとすぐに、洞窟の隅の寝藁にもぐりこんで顔を背ける。
考え事をしていたマリーは、不意にじっとりした視線を感じてハッと顔を上げた。
いつものヒキガエルが目の前にいた。マリーは自分が全裸でいることに気付き、急いでいる事に気付かれないように慌てて服を着た。
最初のコメントを投稿しよう!