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ヒメリンゴが噛み砕かれるシャリシャリという小さな音を聞きながら、コンドルは今にも狂ってしまうのではないかと思うほど物思いに悩んでいた。
やはりマリーには日の光と明るい乾いた家がふさわしいのだ。生肉などではなく、滋養に富んだ穀物や果物が必要なのだ。
ここでは駄目だ。回復したとは言え、一度は死の淵を彷徨うほどの大病を煩わせたのは他ならぬ自分だ。
コンドルは毎日自分を責めた。マリーが木の実や果物をよく食べれば食べるほど、コンドルは自分を責めた。そうしてようやく気付いたのだった。幸せだったのは自分だけだ。独りよがりで、自分勝手な生活だったのだ。自分が彼女を愛するように、彼女も自分を愛しているなど勝手な思い込みだったのだ。彼女はきっと自分を恨んで、憎んでいるだろう。そう思うとまともに顔が見られなかった。
このまま共に暮らしていく事はできないと思った。それは余りに辛すぎた。愛する人と二人きりで、憎まれながら暮らしていくなど。しかし一方で、離れがたく、里に帰そうと思いながらも、一日一日その日を先延ばしにしていた。そのこともコンドルを責めさいなんだ。
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