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「いつも美味しい料理をありがとう」
時間をかけて作った料理に舌鼓を打ち私の腕を褒めちぎる旦那様。洗い物は全部彼がしてくれる。なんと優しい旦那様でしょう。いつの間に、こんなにも私を気遣ってくれるようになってくれたのでしょう。
まるで、私がお姫様のように扱ってくれるようになったわよね。
「ありがとう。貴方が洗い物を手伝ってくれるから猶更料理に専念できるわ。全て貴方のおかげよ」
私は彼の口角が上がるまでお礼を言い、「これで明日も頑張れるわ。大好き」と彼にとっての愉悦となる言葉を告げて抱きしめる。
「ふふ、君は本当に魅力的だ」
甘えるように抱き着き、そろりと実った私の柔肌を押し付ければ。旦那様は嬉しそうに声を弾ませ細くなった私の腰をそっと――と見せかけていささか乱暴めに引き寄せた。
「デザートも、食べていいよね?」
デザート、というのは聞き返さなくとも私は十二分にわかっている。洗い物をしたばかりで濡れた手が私のシャツに手をかけたと同時に、震えそうになるのを全力で堪えて、焦らす様に頷き微笑みながら顔を上げた。
そうすれば、本当に食べられてしまいそうなほどの激しいキスが私の呼吸も言葉も全て奪って、腰をきつく抱き、足元を少し浮かせながら営みの場へと手際よく運ばれていく。
手を取り、腰を取られ、たまに場所を入れ替えながら、ダンスをするように。ダンスと違うのは、顔の距離がゼロ距離で呼吸を共有していることくらいでしょうか。
長いキスに私が、は、と息を吐けば、同時に私の背は柔らかい布団へと押し倒され、両手は乱暴めに頭の上で旦那様の大きな手で拘束されてる。
「興奮するよ」
獣の瞳が煌めくのを見て、旦那様が興奮するとわかっていながら、私はまだ慣れないこの行為に貪欲な瞳から目線を逸らし頬を染め「言わないで……」とか細く鳴き、恥じらう。
――ねぇ、覚えてる?
『四つん這いになれ』
そう言ってうつ伏せになった瞬間
準備も出来ていない私を乱暴に貫いたアナタ
翌日から下腹が痛くて痛くてトイレすらも辛く
病院に行って一週間の療養を言い渡されたあの日
療養しなきゃと言っている私をまた乱暴に抱いて
私は痛みで意識を失って
目を覚ました場所で
私はもう子どもを望めない体になったと知った
あの日の絶望を私は忘れない
どれだけ憧れ、夢見ていたことか
自分の子を抱く夢を何度見たか
恋焦がれるように、どれほど夢見たか
アナタハシッテル?
例え最低なアナタの子でも愛せる自信があったのに――――
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