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夏の終わりの河川敷。
僕はゆっくりと湿った夜風を浴びながら歩いている。
今日は花火大会があるため、この河川敷にはたくさんの人が空を見上げていた。僕も人気が少ない場所を選んで立ち止まり、空を見上げる。
程なくして、打ち上げ花火が上がった。
(今年もこの季節が来たんだな)
毎年やって来るこの花火大会は、僕の中学時代の思い出を鮮明によみがえらせる。
中学時代、僕には好きな人がいた。近所に住んでいる大人のお姉さん、と言った感じの彼女は、柔らかい雰囲気を纏った、笑顔の美しい人だった。
中学生になったあの夏の夕暮れ、部活動の帰り道で、僕は彼女に声をかけられた。
「ねぇ、今夜の花火大会、一緒に行かない?」
それは僕にとって思いもしなかった言葉だった。僕は二つ返事で、お姉さんの誘いに乗った。
それから夜を待って、僕はお姉さんと一緒に河川敷へとやって来た。
今日と同じ、夏の終わりの生ぬるい夜風に吹かれながら、お姉さんと一緒に歩く。夜風が吹くたびにお姉さんの髪が風になびいて、良い香りが僕の鼻腔をくすぐった。そのたびに僕の鼓動がドクドクと音を立て、僕の緊張がピークになった時だった。
「君はいつも、私に優しいね」
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