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二人しかいないから、午前と午後に一回ずつの休憩は別に取る。それとお昼の時間が、ほんのわずかな、彼女の一息つける時間だった。
それが彼女の、この春からの毎日だった。
彼の仕事は、庁舎の入り口を守る警備員だ。といっても庁舎に勤めているわけではなく、委託されて民間の警備会社から派遣されてきている。彼の勤めている会社は、そうやっていろいろなところに警備員を派遣するところだ。中には五、六人でやっているビルもあるが、ここは庁舎といっても大きくはないので、彼と老人の二人だけだった。
老人のほうは、どうせ何も起こるわけがないんだから、と言って、持ち場のすぐ後ろにある休憩室で、昼寝をしたりテレビを見たりして過ごしていることが多かった。
だが彼に不満はなかった。彼は、老人の分も自分ががんばらなければ、と思っていた。毎朝出勤してきて青い制服に着替えると、身も心も引き締まった。
そうやって、彼はもう長い間そこに立っていた。
彼女は地方銀行の行員だ。入社して三年目、突然異動となった。それまで支店勤務だったのが、庁舎の中の小さな出張所に転勤となった。
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