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小さな出張所だから、人員は二人しかいない。彼女と、すでにここに来て八年目だという先輩の女子と。彼女が来たとき、先輩の女子はこの小さなお城の女王のように君臨していて、彼女は哀れなその虜囚となった。
桜が世界を淡いピンクに染める頃、彼女はそういうことになった。
彼の立ち位置から二十メートルほどの向かいには、銀行の小さな出張所があった。彼はそこに立っていることが仕事なので、自然、その出張所を長く眺めていることになる。
いつもそこには、年配の女子行員と、それからもう一人の女子行員との二人が並んで座っていた。まるで自分たちみたいだ、と彼は思っていた。ピンク色の桜の蕾が膨らみだす頃、そこから年配の行員がいなくなった。数日の間、もう一人の女子行員だけがそこに座っており、これからあそこは一人になるのかなと思っていた頃、彼女がやってきた。
彼女は、くるくるとよく働いた。だがそのたびに、隣の先輩の女子に何か言われているようだった。
彼女はだんだん、濡れた子犬のように小さくなっていった。そして桜の花が散り、黄緑色の若葉に変わる頃には、とうとうほとんど動かず、じっと座っているようになってしまった。
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