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彼女は最初、彼があんまり動かないので、警備員の格好をした人形かと思った。そう思えるほど、彼の体つきは整っていた。だがよく見ると、時折り首を動かして外を見たり、身じろぎをしているのがわかった。ときには、庁舎を訪れた人に説明をしたりもしている。それで彼が生きた人であることがわかった。
もう一人、高齢の警備員もいるようだったが、そちらのほうは出てきたと思ったらすぐにまた奥に引っ込んでしまう。それで自然と、彼がずっとそこに立っている形になっていた。
つらくないのだろうか、と彼女は思った。警備員といったって、有事なんてそう起こらない。仕事といえば、庁舎の入り口の風さらしの場所に立って、話す相手といえば、日がな一日寝ているような老人だけ。思えば自分と境遇が似ている。彼はそんな毎日で、つらくないのだろうか。
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