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「いやー、前の人がいきなり辞めちゃってね。二人しかいない小さなところだから、新人や仕事のよくわかっていない人は置けないし。きみなら、しっかりしてるから……」
そう、当時の上司は彼女の目を見ないで言った。
そうして彼女は、この春ここへやってきたのだった。
それでも最初は、万年石になってしまったようなこんな場所でも、できる限りのことをしようとがんばった。支店の中にいたらわからないけど、こういう出張所でこそわかることがあるかもしれない。ほんの少しでも業績が良くなれば、それが評価されるかもしれない。そう思い、自分を励ましがんばった。桜の花びらがはらはらと舞い落ち、仕事帰りの肩にのって慰めてくれる間は。
道路に落ちたそれらが茶色くなり、雨に濡れて崩れ、頭上には黄緑のかわいい芽がちょこんと見られるようになっても、彼女はまだがんばっていた。
だが結局、どうにもなりはしなかった。小さな出張所は岩のように冷たく、頑固だった。
せめて訪れるお客さまに丁寧に接しよう、と思っても、そのお客もほとんど来なかった。
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