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 それなら、たった一人の同僚である先輩の女子と仲良くしたいと思った。だが先輩は、最初から彼女に対して敵意を持っていた。先輩はきっとここに蒸した苔のようになってしまい、彼女が何か新しいことをしようとするのが気に入らないのだろう。またそういう気概を持つ彼女自身が気に入らないのだろう。  支店にいるときは、職場のみんなとお昼を食べに行ったりしたが、ここに来てからはそういうこともなくなった。ただの雑談をすることさえなかった。 今では、何か言われないようにじっと前を見つめて座り、先輩の目から逃れられる休憩時間を待つばかりの毎日だった。休憩になると闇雲に庁舎内をうろつき、外を散歩した。それからお手洗いに行って少し泣いた。  彼は一日中、そこに立って前を見ていた。なぜならそれが彼の仕事だったから。  彼女は一日中、そこに座って前を見ていた。なぜならそれが彼女の仕事だったから。  自然と、二人はお互いを見つめ合う形になった。  彼は彼女を、ずっと見つめた。  彼女は彼を、ずっと見つめた。
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