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 それは自分にとって実に非日常的な出会いだった。 『ノンバイナリー』 体の性別に関係なく性自認・性表現に「男性」「女性」といった枠組みをあてはめようとしない人たちのこと──だと、は教えられた。  僕の感覚は、僕には「性別」がない。一人称は「僕」。理由は特にない。けれど(ちまた)でいう『ボクっ娘』と間違えられたり呼ばれたりするとすごくイラッとくる。  そんな僕の体と戸籍は女性。特に困ることはなかった。体を変えたいとも思ったことはない。と思ったことはあるけども。純粋に、男性の体の感覚に興味がある。──ただそれだけ。  僕は僕。体は女性な僕は僕のまま、生きていく。  ここで話は冒頭に戻るのだが──。 「交際するのはどっちでもいいんですか!?」  なんだ、こいつ。と、僕は思った。  いきなりやってきて、いきなり食いかかるように詰め寄ってきて。 「俺、──さんのこと、タイプかもしれないです!」 「ふぅん。そうなんだ」  僕の内心は、「一昨日きやがれ」だった。
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