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 目の前の天然記念物はきょとんとしながら当然のことのように答えた。 「だって返事がなかったから」 「へ?」 「待ってたんです。返事」  僕は思わず、ぽかんと口を開けたまま頬杖からずっこけた。 「2、3日くらい普通の範囲内ですし。──さん、忙しそうだったから。急かすようなことしたくなかったんで」  なんだこいつ……。  こいつが『忙しそうだったから』とか、『──さん』と呼ぶ理由は、出会ったあの日が趣味のオフ会だったからだ。  徐々に解散したり、大人組は呑みに行く算段をたててたりする中──あれはその最中の出来事だったのだ。  共通の知り合いの知り合いの、知り合い。僕らは現在、お互いの存在自体をあの日初めて知った仲である。  だからハンドルネームしか知らないし、仕事の内容もぼんやりとしか知らない。  僕に性別がないことは、仲のいい数人にカミングアウトしているのがたまたま聞こえただけだった。  ──それだけ。  それなのに、なんだ? こいつ。
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