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「お会計お願いします」
「はーい。こちらに伝票をお持ちください」
伝票を受け取った店長は慣れた様子でレジに打ち込もうとするが、調子が悪いのか、レジは突然変な音を立てて動かなくなった。「何これ、バグ?」と彼女が呟く。
「カレー、とても美味しかったです」
レジと睨めっこしている彼女に告げる。
「ありがとうございます。カレーライスは思い入れの強いメニューなので、そう言って頂けてとても嬉しいです」
彼女はレジから目を離さないまま応えた。客を待たせまいと必死に頑張る様子が微笑ましい。
「へぇ。思い入れが強いのには、何か理由が?」
「私のカレーを食べたいと言ってくれた人がいるんです。昔のことですけど」
「それはそれは。想い人というやつですか?」
「想い人っていうか……まぁ、好きじゃないこともないかもしれない可能性は否定できないですけど」
「なるほど。とても大好きなんですね、その人のことが」
「うっ…………あ、あぁ! レジがおかしい原因わかったかも!」
誤魔化すように話を逸らし、彼女は人差し指をピーンと天井に向けた。
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