オープニング

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 潮目が変わったのは大学受験の時期。俺は第一志望の有名国立大学に落ちた。  生まれて初めての明確な挫折。とは言っても、そんなのよくある話だ。  現に同級生でも第一志望を落ちたやつはゴロゴロいた。彼らは滑り止めの大学に進んだり、浪人したり、思い思いの道を選んでいたが、比率的には浪人して更に上の大学を目指す人の方が多いようだった。  だから俺も滑り止めの私立はやめて浪人を選んだ。のらりくらりと勉強を続け、ギリギリではあったが一年前に落ちた大学に受かることができた。  しかし大学入学後、次なる挫折が俺を待っていた。  ただ受験に向けた勉強さえしていれば良かった高校までとは違い、将来の目標に向けて主体的に行動を選択しなければならない環境の中で、俺は自分のすべきことを見失なった。  とどの詰まり、夢が無かったのだ。なんとなく大企業に行きたいという曖昧なビジョンではモチベーションを保つことが難しく、幾度となく単位を落とし、気付いた頃には二度目の留年が決まっていた。  次々と卒業、就職し、中には家庭まで持ち始めるかつての同級生たちの姿に、さすがの俺も焦り始めた。  大学生六年目にしてなんとか卒業の目処が立ち、満を辞して就活を始めた俺を待っていたのは絶望的な現実だった。  興味を持って調べた業種の募集要項には、必須要件として専門大学・学部の単位や資格等が記載されていた。  学部選びどころか、大学選びすら間違っていたことに俺はこの時ようやく気付いた。  その後の屈辱は筆舌に尽くし難い。  行きたくもない企業の選考を受けては落とされ続ける日々。面接までいければまだ良い方で、大抵は一浪と二留の経歴のせいか書類選考すら通らなかった。  運良く面接までたどり着けても、何も考えずに漫然と生きてきた薄っぺらさをこっ酷く指摘され、俺の精神は徐々に衰弱していった。  そして28度目のお祈りメールが届いた去年の秋の日、俺は俺の心が折れる音を聞いた。
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