オープニング

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 大学だけは辛うじて卒業した今、俺は就職浪人という体で実家に身を潜めている。  が、はっきり言って実態はただのニートだ。現実から目を背け、日夜あらゆるゲームの世界に逃避し続けている。  あぁ。ゲームのように、人生もやり直しがきけば良いのに。  例えば人生の大きなイベントのたびにセーブポイントがあり、自由に何度でもやり直せるとしたら、俺は迷いなく高校の入学式からやり直すことを選ぶだろう。    たった一つのミスで台無しになる「人生」というゲームは、俺には難易度が高過ぎたんだ。  オンライン対戦用のゲームを片付け、先日中古で買ったアクションRPGをセットする。制作発表時点ではかなり期待されていたのに、いざ発売されると致命的なバグやら何やらが続々見つかり、今となってはゲーマー界隈でお笑い草の作品だ。  こんな駄作をつい買ってしまったのは、まるで自分を見ているような親近感を覚えたからかもしれない。  右手で持ったケースのパッケージ絵を眺めながら、左手でゲーム機本体の電源を入れる。 「うわっ! なんだ!?」  突然視界がぐにゃりと歪んだ。次いで、ジェットコースターにでも乗っているかのような強烈な浮遊感が全身を襲う。  とてもじゃないが座っていられず這いつくばった俺の耳に、「Now Loading」というしゃがれた声が届いた。
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