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【1】羽田封鎖
〜東京都大田区・東京国際空港〜
通称、羽田空港。
首都圏の空港発着能力拡大を目的に、海上に造られた全長2500mのD滑走路。
20:30。
そこに警察、消防、救急隊が集結していた。
緊迫した空気の中で、情報が飛び交う。
「紗夜、アメリカから帰って来たばかりで悪いわね。今のところは予定通りで、間もなく機体が見えてくる頃よ」
耳に着けた小型通信機から声がした。
「分かりました咲さん。私と淳は、バスターミナルから到着ロビーまでの経路を確認中で、戸澤さんと桐谷さんが、連絡通路を積んだ車両でスタンバイしています」
羽田空港とは、東京湾を挟んで近いお台場。
そこに、警視庁凶悪犯罪対策本部ビルがある。
話していたのは、刑事課長の鳳来咲と、部下で心理捜査官の宮本紗夜。
夫であり刑事の淳一、元公安の戸澤公紀、元CIAの桐谷美月も同じ課の仲間である。
通報があったのは、20:00頃。
羽田空港に、パソコン音声の通信が入った。
『19:10福岡発 羽田行きNJA268便に爆弾がある。言う通りにすれば、無事に着陸できる。スリルを楽しめ』
連絡を受け、速やかに対処を始めた警視庁直属の対策本部。
「咲、報道陣の方は大丈夫か?」
部長の富士本恭介が、確認する。
「バッチリよ。J-TVの報道陣が、到着ロビーで待ち構えてるわ」
「しかし、なぜJAPAN-TV を?」
「それは犯人に聞いてよね〜。今人気の…何とかって言うアナウンサーが、連続爆破事件の特番まで組んで、力入れてるからじゃないの?」
「あぁ…佐々木萌ちゃんか。確か幼女誘拐殺人にも、力を入れてたな」
「萌ちゃん?あ〜気持ち悪ぅ。その歳で部長までファンだったとは…💧」
「バカもの❣️そんなんじゃない💦とにかく!狙いは彼の可能性が高い。周囲には特に気を付けて、下手に動かない様に」
「アイツね。私も同感。大丈夫よ、現場には紗夜と戸澤、桐谷もいるから」
忘れ去られている淳一💧
そう言いながらも、念を押す咲。
「昴、ドローンと監視カメラは大丈夫?」
「任せて下さい。CAPSと連携して、見逃さない様に不審者を確認します」
システムや情報分析を担当する、神崎昴。
CAPSは、Criminal analysis prediction systemの通称。
日本先端技術研究所が開発した『犯罪者分析予知システム』である。
「268便に、情報は漏れてないわね?」
「管制室の土屋です。要求通り、旅客機にはまだ知られていません」
同じく刑事の土屋香織。
戸澤と夫婦であるが、弱みとならぬ様に、敢えて苗字は別にしている。
可能な限りの万全な体制で、NJA(New Japan Airline)268便を待ち受ける羽田空港。
犯人も、狙いも、何一つ分からないまま…
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