【6】終焉の刻

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耳を疑う咲や戸澤、富士本達。 聞き覚えのある声。 しかし、聞こえてくるはずのない声。 「驚きますよね。さすがに、アハハッ!」 愉快気に笑う佐々木。 まだ、声の出ない皆んな。 「松永さんから、警察に全てを話すと連絡を受けて、色々と話してたのよね〜。話している内に、院長の常盤莉里さんが、通信機を持ってると聞いて、話す許可を出す代わりに、借りて来てもらいました。」 「松永さんと会ったの⁉️」 「紗夜さん、せっかく捕まえた彼を解放するとはね。まぁその方が助かるけど。その後、会場(ここ)に来る前に待ち合わせ、受け取りました」 彼から、付き合っていた話は聞いていた。 しかし、これは予想外である。 「皆さん聞いてますか?紗夜さんの推測は、ほぼ当たりです。Justiceは、私が有志と作った秘密結社みたいなもの」 「人殺し集団が、有志など語るな❗️」 「あっ、紗夜さんの旦那さんね。人殺し?確かに間違いじゃない。でもね。……奴らに、私や両親が受けた苦しみを知らないアンタが、偉そうに言うな❗️」 突然、怒りに弾けた弾丸が、皆を撃ち抜いた。 言い返せない淳一。 「緑川さんも香川さんも、竹内さん、平野さん、松嶋さん。それだけじゃない!今まで、どれだけの事件関係者や家族が苦しみ、どれだけたくさんの方が死んだか!全部ちゃんと調べてから言え❗️」 あの佐々木萌とは思えない怒号。 その苦しみが、分からないメンバーではない。 それ故に、刑事としての心が砕かれる。 「両親と離されたあの日…小学生の私は、命を懸けてでも、必ず復讐すると誓った。その為に計画を練り、恨んでいるこの報道の世界へ入ったのよ。毎日毎日、事件を伝える度に、この先関係者達を待ち受ける苦しみを思って、涙を噛み締めながらね。その日々の悔しさや悲しみが、お前たち警察には、分かるはずはない」 少し間が開き、電話を掛ける声がした。 「竹内さん、裁判所はもういいわ。あなたは死んじゃいけない。みんなの為にも、生きてください。ありがとうございました」 それもまた、驚愕の真実であった。 「佐々木さん、あのテレビでの討論も、最初から竹内さんと?」 「そうよ。警察や世間の目を、彼女に向けさせる為に、協力してもらいました。今回も、警察を裁判所へ集結させるためにね」 見事に騙された、警察や視聴者達。 「紗夜、竹内真希が出てきたわ。確補❗️」 咲の号令が轟く。 警察隊が押し寄せて無事に確補し、爆弾が偽物だと分かった。 「竹内さんに罪はないわ。やらせたのは私…と、汚職まみれの裁判官や職員達だから」 (のち)に、立て篭もりの実行犯として、相応の罪には問われたが、戸澤が提示した汚職の証拠から、裁判所と警察の面子(めんつ)により、情状酌量となった。 「しかし萌…いや…佐々木、星谷を殺す必要はなかっただろうが?」 「宮本淳一刑事さん。あなたも怪我をしたとか…。あれは事故です。長澤宏美さんには、羽田で松永も狙った爆破計画を話し、夫へ復讐する手助けをしただけ。まさかあの親子が、あんなに危険な人物だなんて、知りもしませんでした」 「事故だっただと!」 「はい。彼は自分の経験からでしょう。警察として、弱者を守りたいという高い志しがあり、自殺願望などありませんでした。まさか、長澤勇作が潜んでいたなんて…残念です」 その悼む言葉に、嘘はないと感じた紗夜。 「そもそも、あれは危険人物と知りながら、甘く見た警察のミスではないですか?そうやって直ぐに責任転嫁するのが、あなた方警察です」 「クッ…」 佐々木の言う通りであり、反論はない。 その沈黙に、咲が反撃した。 「元自衛隊員の馬場篤郎に命じて、北海道で観光セスナを撃墜したのも、あなたなのね?」 「その話は、したくありません。理由は知っているはず」 「お前は自ら、実の両親を殺したんだぞ❗️」 「戸澤!」 土屋と咲が同時に注意した。 「知るか❗️私は…一番憎かった東山由紀夫を狙っただけ。父と母が、北海道にいることさえ、知らなかったんだから」 「知らなかったでは済まないわ。誰であれ、パイロットと同乗者も死ぬことは、分かっていたはずだから!」 珍しく紗夜も攻撃した。 ある言葉が気になっていたから…
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