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広い倉庫跡地の中心にある会場。
まだ建設半ばのため、シートや足場が取り囲み、建物はあまり見えない。
「まるで宋と同じね」
ヘリからの映像を見ながら、桐谷が呟く。
山本リサ自らカメラを持ち、中の状況を送る。
「山本さん、危険なのであまり無理しなくていいですから」
紗夜が携帯で伝える。
攻撃する気があれば、とっくに撃墜されていることは、考えるまでもない。
「とりあえず私は、彼女のターゲットじゃなかった様ね。確かに彼女の怒りは、同じ業界の私でも共感できる。でも、一般人が裁くのは間違っています。ましてや、命まで。紗夜さん、何とかお願いします」
「ご協力、感謝します」
それ以上、言えることがなかった。
この状況下で、救出の方法は見出せていない。
〜会場内〜
助けと許しを求めて足掻いていた彼ら。
警察との会話を聞きながら、次第に静かになり、自分の犯した行為について考えていた。
「さてと」
その声に、皆んなビクッ!っとなる。
「計画していたマスコミの悪人は、みんな死刑執行完了〜。残るはあと3つ」
(3つ…?)
愉し気な声に、微妙な哀しみを感じた紗夜。
「まずは、SNS上にいる悪人の処罰から」
会場の皆んなが、半歩ステージから退く。
その不安な顔を、カメラは映し出す。
「もちろんお前たちのこと。ここにいる皆んなの書込みや投稿によって…そんな罪もない、死ななくても良い人達が、自ら命を絶った」
もはや、騒めきも起こりはしない。
皆んなそれぞれが、自覚していた。
「身に覚えがあるみたいね…。いくら後悔しても、どんなに謝っても、死んだ人達は戻らないし…お前たちの罪は消えない。罰なき殺人者達に、今ここで死刑を処する❗️」
『死刑』
知ってはいるが、身近に感じてはいなかった。
その言葉が、頭の中で恐怖に変わっていく。
モニターに浮かび上がった数字。
『1:00:00』
説明は要らず、カウントダウンだと理解する。
1時間か…と思い、何故か少し安堵の息を吐く。
が、右の二桁は猛スピードで減り、左の1は一瞬だけで0となった。
「爆破まで、あと50秒。無駄に長いより、諦め易くて楽なはずよ。祈るも自由、愛用のスマホで誰かに連絡するなり、泣き叫ぶなり、好きにしろ。私はこの特殊強化ガラスの中で、その様を配信してあげる。みんな…死ね❗️」
「佐々木❗️」
咲、淳一、戸澤、昴、土屋が一斉に叫ぶ。
「あと…20秒」
佐々木のアドバイスがなければ、ただただ狼狽えたまま、最期を迎えたはず。
それぞれが、祈り、別れを告げ、泣き叫んだ。
「狂ってるわ…」
呟く土屋の横で、じっと映像をみつめる紗夜。
「5、4、3、2…」
その瞬間。
中の者も、外の者も、皆んな目を閉じた。
「⚡️ズバババババッ⚡️」
会場内に爆裂音と無数の閃光。
爆煙で見えなくなり、そして…
「ヅドドドドォゥン💥💥💥❗️」
激しい爆音が轟き、離れて見ていた紗夜達の地面も揺らいだ。
並んだ太めの鉄パイプからは、夜空へ向けて、凄まじい爆炎が立ち昇った。
「クソッ❗️」
運転しながら、悔しがる咲の声。
レインボーブリッジから、その爆炎が見えた。
警察のみならず、配信動画を観ていた者全員が、その衝撃的瞬間に固まった。
「あのヤロウ、本当にやりやがった❗️」
「バカなことしやがって❗️」
「なんてヤツなの❗️」
歯痒さに声が荒い淳一と戸澤、桐谷。
「シッ!静かに!」
冷静に、画像を見つめている紗夜の声。
「まだ…終わっていない」
少しずつ、会場の様子が見えて来た。
意外な情景に、戸惑う皆んな。
「バカな…生きてんのか…」
ぼんやり見えて来た会場の人々に、力なく淳一が呟いた。
閉じていた目を開き、互いの姿を確認する。
しゃがんでいた者は、ゆっくりと立ち上がり、周りを見回す。
「い…生きてる」
「死んでない…生きてるぞ❗️」
次々と上がる歓喜の声。
絶望の涙が、希望に変わった瞬間。
「やはり、生かしたのね」
「紗夜さんには、バレてましたか。そんな気はしてました。だから、近付かない様に気を付けてたし」
「紗夜、あんた分かってたの?」
勘弁してよとばかりに呟く咲。
「会場内で弾けたのは、ただの爆竹。鉄パイプの中身は大量の花火…まぁちょっと多過ぎて心配したけどね」
会場の皆んなが、ステージ前に集まって来る。
モニターの『いいね』が一気に増え始めた。
「ほら、皆さん。死ぬよりも生きてた方が、たくさん喜ばれてます。それが正しいSNSの在り方。あなた達は、逃げずにここに来た。冗談だと思ってたのかもしれないけど、来たことに意味があります」
いつもの優し気な佐々木萌がいた。
「あなた達は、本当は悪人ではありません。この情報社会に生きている普通の人間。その流れに弄ばれただけ。だから、殺したりはしません。もう2度と、そんなものに引っ張られないで、どうか思いやりを持って生きてください」
怒る者は1人もいない。
彼女の言葉を、その心で受けとめていた。
「さて、逮捕しに行くわよ!」
咲達が到着した。
そのままの勢いで、入ろうとするのを、紗夜が慌てて止めた。
「まだ…終わってはいない。あと2つ」
「何があるって〜のよ、ほら早く」
「咲刑事さん、地雷と罠はあの殺し屋に教えてもらいました。入っちゃダメです」
(あっ…そう言えばそうだったわ💧)
派手な爆発💥で、片付いたと思っていた咲。
「事態は何も変わっていません」
紗夜には、あと一つがまだ分からなかった。
佐々木の言葉を思い返してみる。
(必ずヒントがあるはず…)
「しかし…連続幼女誘拐事件に始まり、空港爆破、そして最後は、まさかこんな復讐劇になるとはな」
(…まさか⁉️)
富士本の言葉で、それに気が付いた紗夜。
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