【7】罰なき殺人 〜終幕〜

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【7】罰なき殺人 〜終幕〜

スマホを、スタンドに立てて自分に向ける。 穏やかな顔で、皆んなを見渡す佐々木。 「父は…旅客機のパイロットでした」 唐突に始まった身の上話し。 真実を知らない人々。 「14年前まではね。New Japan Airlineの就航日。羽田で爆発した旅客機のパイロットが…私の父でした」 どう入手したのか、貴重な事故映像が映る。 着陸と同時に片側の車輪が消え、2秒で爆発。 「視点が…低い」 現場に着いた桐谷が気付く。 「これは私が撮影したもの。事故の真相。その全貌が、この映像から分かるはず。これは戸澤刑事さんに預けます」 「何で⁉️」 咲が戸澤を見る。 「いや…断りもなく、勝手に古い事件探るのも、どうかと思ってな💦」 あの後、佐々木と電話で話していた戸澤。 彼が公安に入ったのは、別の理由もあったが、不正や闇の権力を潰す為でもあった。 「あの事故で私の父は、当時の首相とNJA、そして航空業界の発展の為、犠牲にされました。小学生の私も、非難の声や酷い仕打ちを受け、人殺しの娘…なんて呼ばれて…」 言葉が詰まる佐々木。 「両親は、私を友人に預けて消えました。それからが…復讐の計画の始まり」 誰もが彼女の話を酷いと感じた。 涙する者も。 「みんな、酷いと感じた?でもね…多分ここに来る前のあなた達なら、あの時、あの場にいたら、同じように私達親子を責め立て、追い込んだはず」 思わずうつむく会場。 「でも今は違う。だから、あなた達はこれから先を、どうか正しく生きてください」 「最初から、殺す気なんてなかったんですね。不参加者の事故写真も、全く違う古い事故のものでした」 調べていた昴が告げた。 「私達親子をバラバラにした悪の根源、東報新聞社長の東山由紀夫。彼の乗ったセスナを撃ち落としたのは私。同じ様に両親を失った、馬場さんの手を借りてね。でもね…」 あの北海道の撃墜事件も、佐々木の計画と知り、騒めき立つ会場。 「でもまさか…あのセスナを操縦していたのが、私の両親だとは思わなかった…」 それは、聞く者にもショックな事実。 堪えている涙が、彼女の頬を一雫ずつ流れる。 そんな佐々木を見る者も、涙を流した。 「バカなだよね…生きてたなんて。まさか娘に殺されるなんて…。だから私は、親殺しの極悪人です。会いたかったお父さんとお母さんを殺し、更にはテレビでそのニュースを…自ら読むなんて…あり得ない…です…よね」 袖で涙を拭く佐々木。 あの時、生放送中に固まった彼女の表情。 その理由を知った。 「これを報道している、TERRA(テラ)の山本リサさん。貴女も恋人の死を自ら伝えた、同じ様な経験を持ってますよね。私は貴女を理想にやって来ました。勝手な話だけど…私の生きてきた全ての記録を、貴女に送りました。好きに使っていいです。報道の世界を、これからも正しく導いてください」 (やはり彼女…) 佐々木の覚悟を、黙って受け止める山本。 「佐々木ィ❗️あなた、まさかそこで死ぬ気じゃないわよね!」 咲の声が響く。 「咲さん、通信機壊れますから💦」 土屋が、今にも踏み込みそうな咲を止める。 「あ…」 初めて見る、咲の大粒の涙。 (咲さん…) その時。 「ドドドドドド!」 後方から地響きと共に、大型トレーラーが3台現れ、止まると同時に、荷台からブルドーザーやロードローラー等の重機車両が地に下りた。 「好きなだけ殺しといて、勝手に死ぬなんてなぁ、都合良過ぎだぜ、お嬢ちゃん❗️退()け!」 「(じん)⁉️」 「地雷突破は任せろ!おい近藤!気合い入れて行けぇ〜❗️」 「押忍❗️行くぜ皆んな❗️」 叫んだ近藤を先頭に、次々と建物へ向かって進んで行く重機車両群。 「ドドーン💥」「ドドーン💥」 「ヅガーン💥」 地雷にやられて動けなくなるまで、ひたすら突撃していく飛鳥組の組員達。 「うぉ!やっぱ結構キツイな💦」 「…って、神。あんたは行かないの💧」 「地雷なんて踏んだことねぇからな。死んじまったらどうする💦」 「さすが組長さん…💧」 呆れた目で見つめる土屋。 「よ〜し、そのまま壁をぶち抜けぇ〜❗️」 ちゃんと拡声器を用意していた神…📢。 同時に、紗夜が山本に電話を掛ける。 「山本さん、皆んなを下がらせてください!」 「分かったわ、全く…無茶苦茶ね!」 そう言いながらも、頼りになると思う山本。 「皆さん、ブルドーザーが来ます。ステージ奥の方へ避難してください!」 ヘリの外部スピーカーで伝える。 「何だって⁉️」 「おいおいマジかよ⁉️」 慌てて動き出す皆んな。 そこへ突っ込む重機車両。 「ガッシャーン💥❗️」 へし折れた鉄パイプを、別の重機が切断し、手際よく穴を広げて行く。 「よっしゃ!みんな、俺たちが来た道を通って、敷地の外へ逃げろ!」 何とか辿り着いた近藤が叫ぶ。 「ひぇ〜死ぬかと思ったぜ」 鍛え抜かれた彼だからこそである。
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