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まだ意識はしっかりしている佐々木。
軽く手を振っているのが見えた。
「最期だから…3つ目も教えてあげるわ。紗夜さん、せっかく捕まえた松永裕二を、逃しちゃうんだから…全く。松永久信さんは、確かにロリコンだったけど、とても優しくていい人だったのよ。ろくに世話もして貰えない、可哀想な少女達を、助けてあげていたの。彼なりにね」
「まさか…彼は犯人じゃないって言うの⁉️」
「咲さん、確かに誘拐犯だけど、殺人犯じゃないわ。刑事さん達には、話したはずなのに…」
「そんな⁉️」
土屋が思わず声を出す。
先入観と間違った状況判断。
180度変わった久信の態度に、あの時は呆れるしかしなかった自分に気付く。
(だから2人共、不安定で不可解な心理を…)
今更ながら気付き、後悔する紗夜。
「松永裕二が、警察に全て話すって言うので、話を聞いてたら、あの子供達が、変な名前のガスで殺されたことも喋ってくれたの。私は盗聴して知ってたけど、公表されていないガスの名前をね。間違いないわ」
「殺したのは、松永裕二⁉️」
「マジか…」
「久信さんは、男の子には興味なくて、裕二さんには冷たかったみたい。そのせいで離婚したし。だから裕二さんは、少女達を可愛がる父親が許せなかった。それが殺害の理由よ」
完全に騙されていた警察。
紗夜も、記憶を失って混乱した彼の心理を視てからは、あまり深読みしないでいた。
「クソッ、あの野郎❗️直ぐに指名手配を!」
「戸澤さん、皆さん。安心していいわ。彼が3つ目のターゲットだから」
「何?どう言うことだ?」
「私は父親の久信さんから聞いて、最初から分かってたから。空港では殺せなかったけど、解放されると知って、ここへ来る前に馬場さんに頼んでおいたの…ボンッ💥ってやつを」
「爆弾を仕掛けたのか⁉️」
「えっ…何?…良く聞こえない。…何だか眠くて…そろそろ、お別れです…ね」
ステージの床から1メートルの高さまで、ガスが充満していた。
「クッ…これは宋沐阳が使う神経ガス。脳が全ての活動を停止し、死に至るものよ。10分程で空気に紛れて分解し、跡形もなくなるわ」
CIAで入手していた情報を、桐谷が告げる。
「佐々木❗️」
「佐々木さん❗️」
皆んな、ガラスを叩きながら名前を叫ぶ。
「さよ…なら」
それを最後に、声は途絶えた。
「そんな…」
泣き崩れる紗夜達。
通信機から、松永裕二のマンションで爆発があったと、富士本が伝えた。
約30分後、専門業者によってガラスが切断され、慌てて入った紗夜達の前に、佐々木萌の遺体が、丸くなって横たわっていた。
その姿は、疲れ果てて眠っている様に見えた。
「たった1人で…こんなところで…」
触れようとする紗夜を、咲が引き止め、歯を食いしばり、涙を流しながら首を横に振る。
豊川とその部下、そしてTERRAの医療機関の者が遺体を確認し、係に合図する。
涙の跡を、拭いてあげることも許されず、遺体袋に入れられ、検死のために病院へと運ばれて行く佐々木。
「恐らく…イギリスのVXに似ているけど、ソマン系の有機リン酸化合物の毒ガスね。交感神経系と副交感神経系が狂い、全ての脳機能が停止する最悪なヤツ。容器はTERRAで引き取り、精密検査するわ」
TERRA開発部長兼、医療機関副責任者、IQ240の月島風花が、豊川に報告する。
常盤莉里と医療大学繋がりの親友で、Virtual Duo Singer 『Angel Live』もやっていて、人気である。
「紗夜さん、咲さん、お疲れ様でした」
状況を察し、軽い挨拶だけして出て行った。
紗夜達は、佐々木を載せた車が見えなくなるまで、無言で見送った。
「さて、帰るぜ皆んな」
「神、待って」
「何だ、咲?」
「来てくれて助かったわ」
「ガチャ」
手錠を掛けた。
「なん…」
「……でなんて言わせないわよ❗️立派な銃刀法違反と重機車両の無免許運転の現行犯よ、全く世話がやけるわ」
「マジでか⁉️勘弁しろよ、なぁ皆んな」
「さて帰りましょうか」
「おい紗夜?」
助けを求める神。
「私は戸澤と松永裕二のマンションへ」
「桐谷、戸澤💦」
「私はSNS上の動画の処理をしないと」
「昴、お前まで見捨てるのか❗️」
「バ〜カ!重機車両に免許が必要なことも知らないんでしょ!」
「咲さん、『バカ』は立派な侮辱罪で、『免許を知らない』は、名誉毀損罪ですよ!」
そこだけツッコミ入れる昴。
「咲さん、花山です。本部からでは、何も見えてなかったから分からないが、その神さんとやらに世話になった様だね。よろしく伝えてください」
「いいな、皆んな」
富士本が全員に確認する。
「了解です」
「OK、ボス」
「分かりました」
「そういうことなら、仕方ないわね」
神に掛けた手錠を外す咲。
「ありがと、Chu❣️」
「おっ💦おぅ…またな💖」
ラブラブな警視庁刑事課長と、飛鳥組の組長。
全て通信機が拾っているとは知らず…💧
「富士本さん、今のは何だね?」
「えっ…と…花山総監!今日はご苦労様でした」
「あ…あぁ、お疲れ様。ではおやすみなさい」
(しまった〜⁉️)
今更ながら焦る咲であった。
The killing. 〜罰なき殺人〜 完結❣️
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