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じゅぅーー。
じゅぅぅーーーー。
肉が焼ける美味しそうな音がする。
鉄板の上で牛カルビが美味しそうに焼けていた。
大島琴音はそのカルビを次々と口に放り込む。
「はふはむ、はふはむ」
熱々である。
口の中をヤケドしないように気を付けながら食べている。
ときどき、タレが撥ねて口元が汚れるのを手の甲で拭い、また食べる。
頭は少しうつむき加減。前髪が邪魔して目もとが見えない。
そのため、彼女の表情までは分からない。
「はふはむ、はふはむ」
近所の商店街にある焼肉屋『焼肉 牛魔王』の店内であった。
テーブルを挟んで向かいの席に妹の亜里砂が座り、トングを使って肉を焼いている。
几帳面な性格らしく、カルビを鉄板の上に綺麗に整列させている。
だがその調和を乱すように姉の方はぞんざいに箸を突っ込み、カルビを頬張る。
姉がハイペースで食べるので、亜里砂はさっきからカルビを鉄板の上に並べて焼く作業のみに専念している。
まるで食べられていない。
それでも不平不満を言うことなく、真面目に作業していた。
「……お姉ちゃん、大丈夫?」
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