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肉の焼け加減を見ながら、亜里砂が不意に問いかけてきた。
琴音は答えずに、食べ続けながらとっぴなことを言い出す。
「火を発見した原始人って、すごいよね」
「はあ?!」
「肉って焼くだけで、こんなに美味しくなるんだもん。原始人も初めてマンモスの肉を食べたときは、すごく感動したと思うよ」
「……」
「あ! そういえば!」
「……」
「そもそもマンモスの肉って美味しいのかな? 食べてみたいなぁ。どっかの焼肉屋でマンモスの肉出すとこないかな。あとで家に帰ったらネットで調べてみようか?……って、マンモスはとっくに絶滅してるじゃないかーい!」
琴音は自分でボケけて自分でツッコミを入れる。だが面白くも何ともない。
勢いが空回りしている感じだった。
「……」
亜里砂はそんな琴音に黙ってハンカチを差し出した。
「ん?」
「涙、拭いて」
「なに、なんのこと?」
「涙、出ているから」
「あははは、亜里砂、何言ってるの? やだなぁ、泣いてなんかいないよ。泣いている訳ないじゃん」
「……で、今度は誰にフラれたの?」
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