72食目:カロリーなんて怖くない! ⑤

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 光太は意識を取り戻した佐久間と握手を交わすと、優勝トロフィーを受け取り、みんなのもとに戻ってきた。 「みんな、応援ありがとう」  祝福される中、光太はまっすぐ琴音のところへ向かった。 「光太、優勝、おめでとう」 「ありがとう。琴音の応援のおかげだよ」 「白い石の御利益があったみたいね」 「ああ。応援に来なくていいなんて言って悪かったよ。ダイエットの邪魔かと思って」 「そんなことないよ。また光太と美味しいモノを食べに行きたくてダイエットしてたんだから」 「そうか」  二人は見つめ合う。  ずっと言えなかった言葉が出てきそうだった。  しかしふと気づくと、そんな二人の周りをみんなが固唾を飲んで見ている。 「……!」 「……!」  二人は照れてそっぽを向き合った。  ま、いいか  今日のところは仲直りできたんだし  二人ともそう思っていた。  だがそのとき、澪が気づいて呟いた。 「あれ、郁晴くんは?」 「そういえば、いないな」 「どこ行ったのかしら?」  光太と琴音も顔を見合わせた。  そこに郁晴の父、登志郎(としろう)が現れた。 「郁晴なら今ごろ空港だ」 「空港?!」 「ロンドン留学が決まったんだ。今日が出発日だった」 「美術留学、許可したんですか?」 「しょうがないだろ。誰に似たのか頑固なんだよ」 「でもどうして俺たちに何も告げずに?」 「さてね。それより光太くん、君に郁晴から伝言を託されている」 「伝言?」
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